2) QR、ECR
サプライチェーンマネジメントは、実態面ではQR(Quick Response)とECR(Efficient Consumer Response)の成功によって注目を浴びるようになった。
QRは、1980年代、アメリカのアパレルメーカーが、アジアからの低価格品の輸入に対抗するため開始した。業界の危機に対処するため、メーカーと小売業者が協力し、信頼関係に基づいて、小売情報をメーカーに提供した。その結果、消費者のエーズに迅速に対応するため、生産から販売までの時間を短縮し、在庫回転率を高めることに成功した。
この成功は、日本でも注目され、90年代に導入されるようになった。アパレル産業は、製糸、紡織、染色、デザイン、縫製、卸、小売と多段階のサプライチェーンで構成されているため、そのリードタイムは長期に渡っていた。このため、シーズン前の大量発注。大量生産が通常であった。ある小売量販店は、ポロシャツの販売を行なうにあたり、関連する企業との協力体制(チームマーチャンダイジング)をとり、情報を共有することにより、リードタイムを短縮した。これにより、シーズン中の追加注文にも対応できるようになり、品切れ損失や過剰在庫を削減することに成功した。
一方、ECRは、アメリカの加工食品業界で導入された。ECRは、消費者の立場に立ち、スーパーマーケットの販売情報をメーカーや卸売業者と共有することにより、サプライチェーン全体を効率的に組み直すことを目標としている。小売店のPOS(Point of Sales)データは、EDI(Electronic Data Interchange)により、メーカー、卸売業者に伝達され、発注事務は自動化される。メーカー、卸売業者は、実需データに基づき、必要商品を必要なだけ小売店に供給する。小売店は、検品なしに陳列を行なうことにより、効率化される。
日本においても、ECRは導入が進んでいる。代表的なある大手量販店とトイレタリーメーカーの例では、在庫量が削減され、取引業務、発注業務、検品、棚割が大幅に効率化された。取引業務はオンライン化され、発注から納品、請求、支払いまでペーパーレス取引となった。発注業務は、このシステムのPOSデータによる実需情報と過去の販売データに基づき、自動的に発注量が決定されるようになった。さらに自動継続発注が試みられ、あらかじめ合意した一定の在庫水準に在庫量が減った段階で自動的に発注されるようになる。この場合の発注業務はメーカー側が行なうことになり、小売側は発注業務から解放されることになる。検品は、EDIにより納品ミスが削減されることから、信頼関係に基づき廃止される。POSデータは売り場作りにも活用され、品目別に最適な棚割をコンピュータで行なっている。
3) 製販同盟、戦略的提携
このような製造業者と小売業者との提携関係は、多くの企業で結ばれるようになった。このことは、サプライチェーンマネジメントによって、組織間の関係が従来の独立あるいは系列的なものから変化していることを意味している。このため、両者の新たな関係は、製販同盟あるいは戦略的提携と呼ばれることが多くなっている。製販同盟では、組織の独立を保ちながら、共通の目的のために協力する点に特徴がある。
また、従来の系列型流通経路においても、メーカーがその販売会社を統合する製販統合の動きがある。組織的に統合しないまでも情報システムによって結びつきを強める動きが強まっている。