ことが必要であるが、単なる移転にとどまることなく、文化に合わせて翻訳する必要があるとされる。
協力は、アウトリーチャーでとくに重要とされる。製品価格が高く、ジャスト・イン・タイムなど高度な物流が必要である。このグループの企業は、本業に集中する傾向にあり、物流機能を外注する場合も多い。この場合、物流業者との取引はその場限りというより継続的取引が主体になる。
柔軟性は、セトラー、バロンで重要である。FMS(Flexible Manufacturing System)、NC(Numerical Control)、CIM(Computer Integrated Manufacturing)などの生産技術によって、規模の生産性から生産の柔軟性への転換が求められ、より多くの工場で少量生産が行なわれる可能性が高まっている。このため、物流面でも、多品種少量生産に適したシステムが必要とされる。
5) 日本企業のグローバルロジスティクス
Cooperの研究は、多様なグローバルロジスティクスを分類するための軸として、生産の範囲と調達の範囲を提案したところに意義があると思われる。Cooperは、いくつかの日本企業を例示したのみであるが、その多くは、インベーダー型からセトラー型へ移行したとされている。セトラー型のグループでは、物流システムの管理における柔軟性の重要性が指摘されている。このことは、日本企業が、多頻度少量物流に示される高度な物流システムを国内で築いており、国際物流でも同様な考えのシステムを築こうと試みていることに合致している。
インベーダー型からセトラー型への移行は、第1節でみた日本企業の発展段階でみると、生産機能の海外移転の段階以降に相当する。Cooperの類型は、生産および調達の範囲という2軸に注目しているため、それ以降の研究開発、管理といった機能の移転については図示することができない。しかし、単純な2分図によって生産機能の移転によるグローバルロジスティクスの環境変化が図示されるところに意義があるものと思われる。
このことは、荷主企業のグローバルロジスティクスの国際比較という面からも有意義と思われる。日本企業は、大衆市場向けの大量生産型商品を得意としているといわれている。一方、欧米諸国では、航空機、スーパーコンピュータに代表されるアウトリーチャー型の産業や外食産業を主体とするクローナー型の産業も国際的な優位性を示している。国際的にみた場合、日本企業のグローバルロジスティクスは比較的同一の類型に収 する可能性が高いことを示唆している。一方、欧米諸国のロジスティクス戦略の動向を考察する場合、その多様性を考慮する必要があることをも意味している。このことは正確には、もちろん今後、より多くの企業を対象としたより客観点な尺度を用いた研究によって、確認されるべき点である。
日本企業が、セトラー型に移行し、そのグローバルロジスティクスでジャスト・イン・タイムに代表される柔軟性が要求されるという点は、第1節の内容とも合致する点である。本報告書のテーマとの関連からすれば、荷主企業のグローバルロジスティクス戦略に求められる柔軟性が、国内と海外の結節点である港湾に求められていることが重要と思われる。
(3) サプライチェーンマネジメントにおける日本企業の特徴
1) サプライチェーンマネジメントの重要性
アジア諸国からの低価格品の流入などによって低価格化が進行しており、価格破壊ともいわれる状況が続いている。このような状況に対処するためには、個別企業での効率化だけでは限界があることが明らかになってきた。このために最近広まっているのが、サプライチェーンマネジメントの考え方である(図表1-3)。