経営戦略は、一般的に企業の基本的な長期目標を定めたものであり、「将来の構想とそれに基づく企業と環境の相互作用の基本的なパターンであり、企業内の人々の意思決定の指針となるもの」5と定義される。経営戦略は、企業のレベルごとの戦略に分けることができ、企業全体にかかわる戦略である企業戦略、事業分野ごとの事業戦略、機能ごとの機能別戦略などがある。
ロジスティクス戦略は、マーケティング戦略や人事戦略などと同様に機能別戦略に含まれる。ただし、企業によって機能をロジスティクスとしてではなく物流としてとらえたり、伝統的な企業では輸送や倉庫のように活動スペースでとらえる場合もある。組織面では、ロジスティクス部、物流部として設置される場合が多い。
ロジスティクス戦略は、企業の置かれた環境に合致していくための目標であるため、その企業の置かれた相対的な環境によって、様々な戦略類型があることになる。そして、それぞれの戦略類型ごとに環境適応の方法や必要とされる経営資源が異なるため、ひとつの類型に収斂することなく、様々な戦略類型が併存することになる。
このような戦略類型の研究は、マーケティング分野では活発に行なわれている。よく知られた例として、市場における相対的地位に基づく類型があげられる。経営資源の質と量という2つの尺度を用い、経営資源の質と量両面で優れた「リーダー」、質では優れているが量的な面では限られた「ニッチャー」、質では劣っているが量的には大きい「チャレンジャー」、質と量両面で劣る「フォロワー」の4類型が描き出されている6。それぞれの類型ごとに重視される戦略定石が議論され、実際の企業戦略の構築においても参考にされている。
注5 大滝精一ら「経営戦略」による定義。
注6 嶋口充輝「総合マーケティング」による類型化。
4) グローバルロジスティクスの類型
第1節でみてきた日本企業の国際物流ニーズは、個々の企業の経営資源や置かれた環境条件のもとでグローバルロジスティクス戦略として形作られている。グローバルロジスティクスの類型化は、その類型ごとに戦略を議論することによって、企業レベルで必要となる経営資源が明らかになるなど有意義と思われる。
さらにこのことは、今後荷主企業のグローバルロジスティクス戦略に必要とされる港湾機能など社会的資本の整備を考えるうえでも有意義である。グローバルロジスティクス戦略は、荷主企業の国際競争力を確保するうえでも重要な戦略と位置づけられている。荷主企業の国際競争力の確保は、将来において重要な施策であり、この面でも有意義である。
しかしながら、グローバルロジスティクス類型化の試みは、日本ではまだあまり見当たらないように思われる。ここでは、Cooperの研究7を紹介することにより、グローバルロジスティクスの類型化と日本企業の特徴を指摘することにする。
注7 Cooper,J.,Logistics and Distribution Planning Second ed.
マーケティング分野での研究にみられるように、類型化では、企業の環境をどのような尺度によって区分するかが重要である。Cooperは、企業の生産拠点がどの程度広がっているか、調達範囲がどの程度広がっているかを分類軸とした。その結果
・インベーダー(侵入者)
・セトラー(定住者)