注3 阿保栄司は、「ロジスティクス・システム」のなかでロジスティクスの定義として、この部分に「最終的には消費者の経済的福祉の増進を目的として」という表現を加えるべきと指摘している。
注4 環境問題が重要視されるにつれ、不用になった物を回収する「回収物流」また廃棄するための「廃棄物流」も加えるべきとする指摘も増えている。また環境問題には社会全体として対応すべきであるとの考えから、企業の立場だけではなく社会的観点からロジスティクスを考えるべきとの指摘もある。
2) グローバルロジスティックス
国際物流においても、生産機能の海外移転に伴い、ロジスティクス概念の有効性が高まってきた。荷主企業の国際物流は、輸出段階では販売物流にとどまっていたが、国際化に伴い、新たに海外での調達物流、生産物流が発生するためである。
荷主企業が世界の最適地での調達、生産、販売を目指すグローバル化の段階では、ロジスティクス概念はさらに重要になる。生産費用の最小化を求めれば、生産拠点が調達先、販売先と離れることになり、調達物流費、販売物流費が高まる可能性があるからである。
生産拠点の立地を単純化すれば、原材料のある地域に生産拠点を設ける原材料立地型、商品の消費される地域に生産拠点を設ける消費地立地型が指摘されている。原材料立地型では、調達物流費は低減するが、一方販売物流費は増加する。消費地立地型では、これが逆になる。生産拠点の立地は、調達物流、生産物流、販売物流をトータルで考えたロジスティクス費用と生産費用、さらには商品のマ―ケティング面を考慮して決定されることになる。
現在、日本の製造業者が東アジアを中心に構築しつつあるのは、このように単純な生産立地ではなく、部品を含めた多段階の生産拠点の最適化である。家電製品の場合には、製品の資本集約度、付加価値、需要変化への対応などを考慮して、差別化型の水平分業が行なわれ、高付加価値商品を日本で生産し、低付加価値商品をアジア地域で生産している。パソコンの場合には、資本集約的な製造工程をもつ半導体などの部品とそれらをアセンブルする拠点を異なる国で行なう工程間分業が行なわれている。このようなアジア地域の国際水平分業体制に対しては、前節でみたように国際調達拠点(IPO)を通じたロジスティクスの最適化が行なわれている。
グローバルロジスティクスは、ロジスティクスの考え方を地球規模に拡大し、調達・生産・販売物流の最適化を図ろうとするものである。国際物流とグローバルロジスティクスの差異は、物流とロジスティクスの差異と同じである。
さらに国際(インターナショナル)ロジスティクスとグローバルロジスティクスを区分して、前者は国境を越えるロジスティクスのみに限り、後者を国際ロジスティクスと国内ロジスティクスを合わせたものとする定義もみられる。しかしながら、複合一貫輸送によって国際ロジスティクスに国内ロジスティクスが含まれることが一般化していることを考えれば、あまり厳密に区分して定義する必要性は薄いと思われる。
グローバルロジスティクスの概念は、当然ながらロジスティクス以上に定着していない。このため、その定義をめぐってこのように流動的な面がみられる。ここでは、国境を越える販売物流、調達物流、生産物流に加えて、それに付随する国内の物流を合わせて最適化しようとする考え方をグローバルロジスティクスとする。
3) グローバルロジスティクス戦略の重要性
グローバルロジスティクスには、企業の生産・販売拠点の立地の差異を反映して様々なパターンがある。様々な選択肢のなかから、そのパターンが採用される理由があるはずである。その説明理由として重要となると思われるのが、戦略の概念である。