普及してきたと考えられる。従来のポート・ツー・ポート輸送の場合には、港までの集配、海上輸送、通関などの費用を積みあわせていく必要があったが、これらの費用は貨物量、頻度、品目などの条件によって変動し、算定は容易ではなかった。複合一貫輸送では、これらの費用を含めたドア・ツー・ドア輸送の費用が提示されるため、トータルコスト分析は容易になる。
(2) ロジスティクス概念とグローバルロジスティクス戦略の類型
1) ロジスティクス概念
荷主企業の物流の範囲は、生産の段階から消費に至る「販売物流」にとどまらない。原材料の調達段階における「調達物流」、生産段階における「生産物流」をも含めて管理すれば、いっそうの効率化が可能になる。単純な例として、原材料の調達で利用したトラックの帰り荷に販売商品を積載することにより輸送効率を高めている企業がある。
このように、販売物流、調達物流、生産物流を合わせて最適化しようとする考え方がロジスティクス概念である(図表1-2)。アメリカ・ロジスティクス管理協議会(CLM)では「顧客の必要条件に適合させるべく、原材料、半製品、完成品ならびにその関連情報の、産出地点から消費地点に至るまでのフローと保管を、効率的かつ費用対効果を最大ならしめるよう計画立案、実施、統制する過程である」と定義している。
ロジスティクス概念では、「顧客の必要条件に適合させるべく」と定義されるように顧客ニーズの充足が重要とされている。しかしながら、この部分について顧客の欲求がすべて妥当であるとは限らず、不必要に過剰なサービスを要求する結果、過度に多頻度な輸送が生じ社会的な悪影響を及ぼす恐れがあるとする指摘もある3。
ロジスティクスの定義をめぐっては、このような議論が多くなされている。また、一般には、単純に物流の英語訳と思われている場合も多いようである。実際に販売物流、生産物流、調達物流がロジスティクスの構成要素であることから、物流とロジスティクスを混同する場合が多いこともやむをえない面がある。ここでは、最大公約数と思われる販売物流、調達物流、生産物流を合わせて最適化しようとする考え方をロジスティクスとして広義に把握しておくこととする4。