6) 通関活動
異なる国にまたがるものの流れである国際物流では、通関が必要になる。通関は、関税の徴収、社会悪物品の取締りなどを主要な目的としている。しかし、通関に求められる役割は変化しており、先進国では貿易促進の立場から関税率は低下し、関税徴収の役割は低下している。現在日本では、輸入拡大や国際分業の拡大に対応するため、通関の迅速化がとくに求められている。その一方、麻薬、拳銃などがかかわる重要犯罪は増加傾向をみせており、このような社会悪物品に対して適正な水際での取締りが必要とされている。
通関手続きは、通関業者が荷主に代行して行なう場合が多い。通関業法により、通関業者は国家試験に合格した通関士を各営業所に配置することが義務づけられている。通関士は、輸出入申告書の作成、申告手続き、検査立ち会いなどを行なっている。
通関においても情報化は重要である。通関の役割として「迅速かつ適正」であることが求められており、そのために多くの国で通関情報システムが導入されている。日本では、1978年に輸入航空貨物を対象に通関情報処理システム(Nippon Automated Cargo Clearance System:NACCS)が導入され、85年には輸出航空貨物にも拡大された。91年には海上貨物にも拡大され、海上貨物用システムはSea-NACCS、航空貨物用システムはAir-NACCSと呼ばれるようになった。大部分の貨物が電算処理されている。また、輸入審査の事務処理を迅速化するために、同年、通関情報総合判定システム(Customs Intelligent Database System:CIS)が導入されている。
Air-NACCSは、航空会社、保税蔵置場、混載業者、通関業者、航空貨物代理店、銀行、税関をオンラインで結んでいる。税関申告、届出などの税関手続きが事業者の端末からでき、税関手続きの進行状況や貨物の保管状況を照会できる。この他、貨物の保管料や通関手数料の計算。請求、在庫管理、貨物の搬出予約などの民間企業の業務も行なうことができる。
一方、Sea-NACCSでは、税関、通関業者、銀行をオンラインで結んでおり、税関申告とこれに対する許可、関税・消費税の納付など、通関業務を処理している。Air-NACCSとは異なり、通関業務のみを対象としており、貨物管理業務などは対象としていない。
CISは、輸入申告を迅速かつ適正に処理するために、過去の検査実績や輸出国、品名、輸入者などに基づき、適正な申告が行なわれている可能性が高い貨物と、そうでない貨物を振り分けるためのシステムである。前者については審査を簡便化し、後者については重点的に審査や検査を行なうことにより、事務処理を効率化することを目的としている。
これらのシステム導入により、申告価格の算出、税率適用、為替レートの換算などが自動化され、申告書作成が容易になった。また税関審査が電算化され、税金や料金が自動納付されるため、通関手続きは迅速化された。しかしながらNACCSは食品・動植物検疫手続きとの連携が不十分であり、とくにSea一NACCSは適用範囲や運用時間が限られていたり、港湾貨物情報ネットワークシステム(POLINETS)などの関連情報システムと接続されていないなどの課題が残されている。
POLINETSは、輸出港湾貨物に関連する船社、海運貨物取扱業者、検量業者、検数業者をオンラインで結び、船積み指図、検数・検量依頼、作業完了通知などの情報交換を行なうシステムである。97年4月現在、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、四日市各港で導入され、海運賃物取扱業者133社、船社18社、検量・検数業者4協会が参加している。この他、海上貨物に関する情報システムには、荷主、船社、銀行間の運賃支払いに関するS.C.Net(Shipper/Carrier Shipping Information System)と荷主、海運貨物取扱業者、銀行間の船積み手数料支払いに関するS.F.Net(Shipper&Forwarder Network System)がある。将来的に、Sea-NACCSを含め、これらを一体化した貿易関連情報ネットワークを構築することが検討されている。