2. 物流からロジスティクス、サプライチェーンマネジメントヘ
以上のような物流ニーズの高度化は、物の流れに対する管理の考え方が発展してきたことを背景としている。本節では、荷主企業の物の流れの管理が、物流管理から始まり、ロジスティクス、サプライチェーンマネジメントに拡大してきたことを示す。
輸送量、保管量が拡大するにつれ、輸送、保管、通関などの活動ごとに合理化するだけでは限界があることが明らかになり、トレードオフを考慮して諸活動を統合した物流管理が広まった。物流管理は当初、販売物流をおもな対象としていたが、調達、生産にかかわる物流管理も重要となり、やがてこれらを統合するロジスティクスが広まった。また、国際ロジスティクスにおける戦略の重要性についても議論されるようになった。さらに最近では、単一の企業を超えた製造業者、卸売業者、小売業者を結ぶサプライチェーンマネジメントの重要性が説かれるようになった。アメリカで始まったサプライチェーンマネジメントは、流通段階や企業間の関係が異なる諸外国では、その差異を反映し様々な形で適用されている。日本においてもサプライチェーンマネジメントの導入が始まっており、その有効性は高いものと思われる。
(1) 物流(物的流通)管理
荷主企業の物流ニーズの発展に伴い、物の流れに関連した諸活動をシステム的に統合するため、物流概念が広まった。国際物流の分野においても、荷主企業の国際化により、物流管理はますます重要になっている。
物流の機能は、一般に空間的、時間的懸隔の克服であるといわれている。国際物流では、これに加えてさらに国境障壁の克服があげられる。国際物流では、克服すべき空間的、時間的懸隔が大きく、さらに国境障壁が存在することから、国内流通よりも国際流通で物流が担う役割は大きい。
国際物流の活動は、国内物流と同様な活動(輸送、保管、包装、荷役、流通加工、物流情報)と国際物流に特有な国境障壁を克服する活動から構成される(図表1-1)。
1) 輸送活動
国際物流では、長距離を効率的にものを移動させる輸送活動が重要な役割を果たしている。島国の日本では、長距離大量輸送を低コストで行なう海運への依存が著しい。しかし、貿易貨物の高付加価値化に伴い、迅速な航空貨物輸送の役割が重視されるようになった。現在では、金額ベースでみると輸出で26%、輸入で27%の貨物が航空で運ばれるようになった。
航空で運ばれる品目は、輸出では、機械機器、化学製品、金属・同製品が多く、輸入では機械機器、金属製品、食料品が多い。運賃負担率の高い高付加価値製品を中心に航空貨物で運ばれており、貿易のなかで重要な役割を占めている。
国際物流では、輸送時間がかかるがコストの低い海運と、迅速だが高運賃の航空貨物輸送しか実際上輸送手段がない。この点が、トラック、鉄道のような中間的な特性をもつ輸送手段が中心的に利用される国内物流と異なる点である。ただし、中間的な特性をもつ輸送手段として、欧州、南米などの遠隔地域向けに、海上輸送と航空輸送を結び付けたシーアンドエア輸送が提供されている。シーアンドエア輸送は、最近の航空貨物運賃の低下によって、その運賃の割安感が減少し、輸送量も減少傾向にある。