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このような現地調達の拡大は、後述のCooperの文献では「インベーダー」から「セトラー」への転換としてとらえられている。すなわち、市場侵略的な現地生産から、現地企業としての定着型の現地生産への転換である。

自動車産業を例にとると、CKD(Complete Knock Down)からSKD(Semi Knock Down)へ、最終的には現地調達へ移行している。当初は、ほとんどの部品をまとめて輸出するCKDが行なわれ、現地では最終の組立のみが行なわれていた。やがて、比較的現地調達が容易な部品については現地調達し、重要部品を輸出するSKDに移行した。主要国でローカルコンテンツ規制が強化されるにつれ、徐々に現地調達が拡大されるようになった。

 

3) 複合一貫輸送の発展

海外現地生産が活発化するにつれ、重要部品の日本からの輸出が拡大した。重要部品の調達が現地生産では重要となり、必要なときに必要なだけの部品を納入することが求められた。製造業者は、国内生産で行なわれているジャスト・イン・タイム物流を国際物流にも適用し始めた。このような物流ニーズに対応して、複合一貫輸送が発展した。

自動車産業の北米へのKD部品の輸出では、国内のジャスト・イン・タイム輸送が国際物流に拡大され、「海を渡るコンベア」とも呼ばれる輸送システムが開発された。これは、日本から北米西岸まで定曜日運航のコンテナ船で輸送し、西岸の主要港でコンテナ2段積み列車(Double Stuck Train:DST)に積み替え、中西部の組立工場まで一貫して輸送する方式である。KD輸出は、DSTを利用した効率的な複合一貫輸送を発展させるきっかけとなった。

ここでアメリカ向け複合一貫輸送をみてみると、北米西岸の諸港を経由する同盟船社サービスとして、鉄道で内陸地域まで一貫輸送を行なうIPI(Interior Point Intermodal)、大西洋岸まで鉄道で一貫輸送を行なうMLB(Mini Land Bridge)がある。また、北米大西洋岸を経由して内陸部に鉄道輸送する同盟船社サービスとして、RIPI(Reversed Interior Point Intermodal)がある2。これらの輸送量の推移をみると、86年をピークに減少した後、90年代に入って再び増加傾向に転じている。この要因として、複合一貫輸送サービスの大口利用者である自動車産業のKD輸出が前述の利用で減少したことに加えて、荷主企業が物流管理を強化するために、北米域内での輸送を荷主みずから手配するようになったことが指摘されている。

 

注2 このほか、盟外船社やフォワーダーが提供する同様な複合一貫輸送サービスがあるが、輸送量は不明である。

 

4) 三国間物流、逆輸入の拡大

海外生産拠点がフル稼動するようになると、そこからの販売物流が重要になる。販売先によって、内陸輸送や第三国への輸出、日本への逆輸入が生じる。欧米諸国の生産拠点では、多くの企業の場合、現地販売が中心である。一方、アジア諸国は、世界の生産拠点として位置づけられ、日本への逆輸入、欧米諸国への三国間輸出が主であった。さらに、最近ではアジア諸国の経済力が上昇しており現地販売の比重が高まっている。

この段階における荷主企業の物流ニーズの特徴は、逆輸入、第三国輸送のように、世界を結ぶ物流ネットワークに対するニーズが高まることである。しかも、企業間競争は激化しており、より低廉なコストが求められている。

このような物流ニーズに応えるため、船社は世界のハブ港を超大型船舶で結び、そこで貨物を積み

 

 

 

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