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(2) 輸出段階における物流ニーズ

 

1) 輸出開始と間接貿易

戦後、日本企業の国際化は、輸出から始まった。企業のなかには、比較的早い時期に海外生産を開始したものもあるが、多くの企業では輸出による海外市場への浸透はその後の段階に比べ長期間続いた。このこともあり、日本企業は、伝統的に海外で生産するよりも日本で生産したものを輸出する指向が強いといわれている。現在でも多くの日本企業は潜在的に輸出指向が強いといわれており、この段階における特徴は過去のものではなく、一部の企業では色濃く残っている。

輸出貿易は、直接貿易(直貿)と問接貿易(間貿)とに大別することができる。前者は、製造業者が自社の貿易部門を通じて輸出する場合であり、後者は商社など他社を通じて輸出する場合である。日本の製造業者は、海外市場の開拓力や貿易ノウハウの不足、資金面での制約などから、商社の販売網を利用する間接貿易に依存するケースが多かった。日本には諸外国ではまれな総合商社が古くから存在していたことも理由としてあげられる。

 

2) 間接貿易における物流ニーズ

間接貿易の場合には、製造業者は本業である生産に集中し、商社が開拓した販売網を利用して、海外市場へ浸透を図ることができる。製造業者の物流ニーズは、国内生産拠点から商社に商品を引き渡すまでの範囲に限定される。商社は、商品を引き受けた後、輸送や保険手続きを行ない輸出する。

間接貿易を中心とする輸出段階では、大量の規格化された製品の効率的な輸送が求められる。その特徴として、港から港へ(ポート・ツー・ポート)の効率的な大量輸送、輸出手続きを含めた国内の物流効率化、日本本社による一括的な物流管理があげられる。

 

(3) 販売拠点の設立段階における物流ニーズ

 

1) 販売拠点の設立

1950年代に日本経済の復興が本格化するにつれ、製造業者は輸出を増加させた。輸出が本格化する50年代から60年代になると、欧米諸国への販売網の整備を目的とする海外直接投資が増加した。間接貿易の主体である商社だけでなく、電気機械、自動車などの先進輸出企業もみずから直接貿易にのりだし、海外販売投資を本格化し始めた。

これらの商品は、高付加価値型商品であり、マーケティング上、差別化戦略が必要とされた。このため、顧客のニーズをより直接的に把握し、自社の戦略に則ったマーケティング活動を行なうことが求められた。このため、販売機能を他社に依存する間接貿易から直接貿易に移行する企業が増え、いわゆる「メーカーの商社離れ」が始まった。この傾向はその後も続き、現在では、大手企業のほとんどが直接貿易を中心とするようになった。

 

2) 直接貿易における物流ニーズ

この頃から、製造業者が海外に販売拠点として販売子会社を海外に設立し、現地での販売や物流を効率化する動きが顕著になった。海外に販売子会社を設立するようになると、製造業者の物流は、輸出に加え、現地での販売物流まで拡大することになり、次のような物流ニーズが生じてきた。

・国内生産拠点から海外の自社ストックポイントヘの輸送効率化

・海外ストックポイントから販売拠点への内陸輸送効率化

・海外拠点の物流効率化(輸入手続き、輸送手配を含む)と物流管理

 

 

 

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