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第1章 荷主企業の物流ニーズ―総論―

 

今日の物流市場は、荷主優位の買手市場にある。国際競争下にある日本の港湾の競争力を考えるうえで、荷主企業の物流ニーズを満たしていくことが重要である。港湾は、陸上輸送と海上輸送の結節点として重要な機能を果たしており、より使いやすく、より効率的な港湾である必要がある。さらに、今日のようにアジア地域における国際分業体制が構築されつつある段階では、効率的な国際物流体制が求められており、貿易の玄関である港湾には様々な機能が求められている。本章では、このような観点から、荷主企業の国際物流ニーズを分析することとする。

 

1. 荷主企業の国際化の進展と物流二―ズの発展

 

(1) 日本製造業者の国際化発展段階

 

この節では、日本の製造業の国際化の発展段階を通じた物流ニーズの発展状況を概観する。戦後の製造業者の国際化過程を振り返ると、企業の機能のなかから販売、生産、研究開発といった順に海外移転させてきた。

これらの発展段階は様々な区分が行なわれているが、このような企業の機能が移転される段階に着目した分類が採用される場合が多い。経済企画庁『昭和62年度経済白書』では、?@海外販売拠点の設置、?A生産・技術開発の海外移転、?B経営資源のフルセット海外移転、?Cグローバル戦略に基づく海外拠点整備に区分している。

日本企業の国際化は、1980年代後半以降、急速に進んでおり、国際化先進企業の多くは、進出した世界各国の経営資源の状況や市場特性を考慮して、グローバル戦略に基づいて海外拠点の活動を最適化するグローバル化の段階に至っている。

日本企業の国際化によって、克服すべき空間的、時間的懸隔は拡大しており、物流の役割はますます重要になっている。その結果、第2節でみるように調達、生産、販売を統合するロジスティクスの概念が浸透するようになり、荷主企業の物流に対する取り組みはさらに深まりをみせている。

以下では、海外進出の発展段階に対応させて荷主企業の物流ニーズが高度化してきたことをみてみよう。なお、これらの発展段階は、企業別に到達する時期が異なっており、以下で示す年代はおもに

国際化の進行が速い電気機械、自動車などの産業の主要企業に対応している。したがって、企業によってはこれより遅れる場合もあり、たとえば現在もグローバル化段階に達した企業と国際化初期段階の特徴をもつ企業が併存していることに注意する必要がある。

 

 

 

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