入規制と事業区分が厳しすぎ、産業構造が経済環境に対応していないことにある。また、一定の規制緩和を前提に、港湾運送事業者の新規事業機会や海外進出の可能性、近年進行している貨物の港湾素通り対策としての流通加工業務への対応について整理する。
第5節では、地方港を含めてのネットワークとしての港湾整備の課題について述べ、わが国の港湾管理者側の課題について述べる。第6節では、国際的に進行している地方分権化と競争導入政策のなかでの港湾の課題について整理する。第7・8節では、それぞれ米国と英国の港湾管理政策について略述し、わが国の政策への参考としている。とりわけ英国での港湾民営化については、ひとつの極端ではあるが有力な政策選択肢として、政策実行案レベルでの評価を行なう。
第7章 港湾ネットワーク均衡モデルの構築を目指して
黒田 勝彦
本章では、国際コンテナ定期輸送市場におけるネットワーク均衡モデルを構築するに際し、まずモデル構築の前提となる視点を設定するために、考慮すべき諸条件を整理した。すなわち、?@港湾運営問題の従来の取り組み、?A港湾運営問題を取り上げる背景の社会・経済的状況、?Bアジアの主要港湾の現況と特徴、?Cわが国港湾整備運営の方向、である。
次いで、これらの基本的な背景や情勢のもとに、港湾運営政策や港湾整備政策が船社や荷主の行動に与える影響を分析し、ひいては地域経済に及ぼす影響を分析するために、ネットワーク均衡モデル構築の考え方を整理した。具体的には、?@国際コンテナ定期輸送の市場均衡の概念、?A国際港湾ネットワーク均衡のゲーム論的解釈、を説明した。
これらの解釈のもとで、国際コンテナ輸送のネットワーク均衡は、情報が非対称的な場合における3者、すなわち?@港湾の運営・管理主体としての政府、?A港湾を利用することによって輸送サービスを荷主に提供する船社、?B船社の輸送サービスを購入する荷主による先手・後手のあるゲームのシュタッケルベルグ均衡であることを明らかにした。さらに、数学モデル構築の第1ステップとして、政府・船社・荷主の行動と市場における彼らの戦術の内容を整理し、行動目的、戦術を定式化するための考え方を整理した。