日本財団 図書館


第2節では、荷主企業の物流ニーズが発展するにつれ、物流管理にかかわる概念が拡大していることを示す。物流概念の導入は、輸送、保管、通関などの活動ごとの合理化から、諸活動の統合によるトレードオフを考慮した統合的な管理をもたらした。物流はおもに販売物流を対象としていたが、ロジスティクスでは、さらに調達、生産にかかわる物流を含めた合理化を強調している。ロジスティクスは、国際物流にも適用され、グローバルロジスティクスによる統合的な管理が行なわれている。さらに最近では、単一の企業を超えた製造業者、卸売業者、小売業者を結ぶサプライチェーンマネジメントの概念が取り入れられている。米国で始まったサプライチェーンマネジメントは、その他の国にも広がっているが、流通段階や企業間関係の差異を反映して国によって特徴がみられる。

第3節では、日本企業の物流ニーズの変化によって、国際物流のなかで港湾が果たす役割に影響が及んでいることを示す。日本企業は、国際的な水平分業体制を構築しつつあり、製品輸入への対応、港湾運営の改善、背後圏とのアクセス改善などが必要とされている。サプライチェーンマネジメントの概念が浸透するにつれ、よリー貫したシームレスなものの流れが必要とされるようになり、港湾における貨物の取扱いはさらに効率性が求められている。

 

第2章 荷主企業の物流ニーズ―家電・繊維のケース―

徳田 龍裕

 

本章では、グローバルな競争が激化するなかで、関西における地域経済の大きな柱となっている家電産業および繊維産業について、その産業動向・企業のおかれている状況・課題を整理し、そこから物流の変化をみる。そして、これらを支える港湾・物流のあり方を考察している。

第1節では、わが国の産業動向、関西経済の現状および関西における輸出入の現状について簡単に触れ、家電産業・繊維産業のおかれている状況を確認する。第2節では、家電産業の現状、産業特色と企業収支、および今後の展望と課題を整理したうえで、第3節で家電産業のヒアリング調査から得た物流の実態とニーズについて論じる。また、繊維産業についても第4節において現状、特色と今後の動き、および荷主としての展望やニーズについて論じる。そして、この2つの産業展開の方向性をまとめ、最後に第5節でグローバルな経済活動を支える荷主ニ―ズ優先型の港湾整備・管理システムの必要性を導いている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION