リカバリー(=暗号鍵の回復)機能を確保しておくことが必要である。
キーリカバリー機能を確保しておくことは、商取引を始めとする様々な場面において、暗号鍵の紛失や事故等による消失の際のトラブルを解決することにもつながることとなる。
しかしながら、このキーリカバリー機能については、個人のプライバシー係る問題点も指摘されており、その適用については、十分に配慮して検討を進めていくべきである。
?B 諸外国における施策の動向
キーリカバリー機能に係る施策のあり方については、現在、国際社会において、極めて高い関心を持って議論されている。
例えば、欧州連合におけるTTPに関する調査研究においても、
・ 刑事事件が発生した場合において、暗号化された情報内容を回復するために刑事手続上執りうる手段の検討
・ 暗号化された情報内容の確実な回復を担保するためのTTPの許認可制の具体的内容の検討がその内容に盛り込まれている。
しかし、日本においては、キーリカバリー機能の必要性に対する認識が未だ十分に広まっておらず、ましてや、キーリカバリー機能に係る施策のあり方に関する議論については、ほとんど行われていないというのが実情である。そもそも、キーリカバリー機能に関する議論は、米国の暗号政策の中から生まれたものであり、キーリカバリーの言葉自体も、KMI(Key Management Infrastructure)構想の中で、国家のキーリカバリー機能のあり方に係る一つの考え方を示して以来、暗号鍵の回復を意味するものとして一般的に使われるようになったものとされている。
そして、その他の欧米諸国や国際会議においても、米国の暗号政策の動きを多分に念頭に置いてキーリカバリー機能に関する議論が進められている傾向が強い。
そこで、まず、米国の暗号政策について整理した後、諸外国におけるキーリカバリー機能ないし秘密鍵管理機関に関する議論の流れを概観していくこととする。