1. 本人だけの特徴に起因したものであり、偽造が困難であること
2. 本人は記憶する必要がなく、認証パラメータの抽出が用意であること
が挙げられる。ここでは、これらの条件を満たす、個人的特徴として使うことができる人体形状・組成上の手がかり、及びそれらから派生し、個人的特徴として利用し得るものを示す。
(2) 指 紋
指紋に個人差が著しいことに気づき、その分類を最初に試みたのは解剖学Purkinje(1823年)といわれている。その後多くの研究が積み重ねられ、指紋は一人一人全て異なり、しかも一生変わることがないもので、個人識別法として最も確実性の高いものとして広く認められている。しかも二値パターンとして表現可能であり、記録・保存にも適し、手軽に、しかも確実に個人識別を行なえる方法として、その利用には長い歴史がある(警視庁で指紋法を採用したのは明治44年である)。犯罪審査ではまず指紋の採取が試みられることは誰でも知っていることである。
同一の指紋を持つ人はいないことが保証されているから、正確に指紋を観測でき、それを正確に認識できれば何ら問題はないが、実際には技術的にも難しい問題が残されている。指紋そのものは不変でも皮膚の変形は生じ得るもので、そのための変形に対応する決定的な方法は未解決である。また、指紋の照合は通常のパターン認識の問題に比べて多数の登録パターンがあり、その中のいずれであるかを調べるため、照合時間短縮のための工夫が必要である。
また、指紋を採取されることに対する拒絶反応のようなものが一般の人には少なからずあり、プライバシーの保護などの対策も実用上は非常に重要なファクターである。
(3) 眼 紋
眼紋とは、網膜上の毛細血管による詳細なパターンのことである。網膜血管の配置パターンが個人に固有の特徴を持ち、これに基づく個人識別の可能性が既に1935年に指摘されているという。指紋が万人不同であるように、眼紋も万人不同と考えられている。眼底網膜像は外部から観察できる数少ない内部組織である。指紋や手形などは外部組織であり、その形状を人工的に変更することも容易である。しかし、網膜は内部組織であ