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ら持ち出していたことが判明した結果、業務上横領罪を適用することで逮捕に踏み切ることができた。もしそうでなければ、顧客データの横流しだけでは、罪に問うことがでいなかったわけである。

前にも述べたように、欧州先進国の多くは、法律によってプライバシーや個人情報保護を行っている上、EU域内での同法のハーモナイゼションを図る指令が、1998年10月より発効する。

我が国には、こうした情報流出を直接取り締まる法律がないだけに、法制度の整備を求める声が高まっている。

ちなみに、総理府が1995年に行った世論調査では、「今後の情報通信の高度化、マルティメディアの進展によって、プライバシーの侵害や情報通信を悪用した誹諺中傷が横行する」と回答者の37%が応えている。

また、国民センターが1994年9月に行った、主婦を対象にした第25回国民生活動向調査において、「プライバシーは、今後ますます侵害される」と55.7%の回答者が応えている。こうした結果、回答者の多くは民間部門についても業界の自主規制や監督官庁の行政指導だけでは不十分で、何らかの法的措置が必要であると考えている。

最近では、日常生活にインターネットが浸透しつつあり、大量の個人情報の収集、蓄積、流通が極めて容易になってきていることからも、早急に刑法の適応も視野に入れつつ適切なルールを策定する必要が生じている。

 

?A 高度情報ネットワーク社会・ECの進展と個人情報保護

今日、高度情報ネットワーク社会が急速に進展する中、サイバー空間の現出によって発生するさまざまな課題への対応が重要になっている。つまり、高度情報化社会とは、従来のリアルな世界と、ワンストップ行政サービス、デジタル図書館、遠隔医療等のサイバー空間とが共存する社会といえる。サイバー空間では、自分自身の代わりにエージェント(代理人)が行政機関等へ赴くことになるため、リアルな世界で持っている権利、資格、財産をこの代理人が保有することを明確にしなければならない。また、サイバー空間では、場所の観念が無いため、消費者にとっては自分が商品を購入しようとしている店舗が実際にはどこにあるのか、どういった店なのかが非常に分かりにくく、漠然とした不安がつきまとう。さらに、こうした販売店に蓄積された個人情報が不当に流出したり、利用される心配がつきまとう。また、同空間には国境がないため、海外での医療

 

 

 

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