しかしながら、一方で、法的措置は別にしても、維持管理等運用に関する規制の一環として個人情報の維持管理についての適切な行政運営上の措置を推進すべきことを強調している。こうした委員会での中間報告を受け、政府におけるコンピュータ処理に係わるデータのうち、特にその漏洩、滅失、き損等を防止する必要のあるデータの保護を図ることとなった。
1980年9月、OECDでは「プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドラインに関する理事会勧告」を採択したが、これを受け、我が国でも1981年から行政管理庁において、内外の状況を踏まえ「プライバシー保護研究会」が発足した。同研究会での検討の結果、1982年7月に個人データ処理にともなうプライバシー保護対策について、新たな制度的対応が必要であるとする意見が取りまとめられた。こうした意見を踏まえ、1981年6月に発足した臨時行政調査会(臨調)では1983年3月の最終答申において、行政情報の保護について以下のような提言を行った。
つまり、行政機関の保有するコンピュータ処理に係わる個人情報の保護対策が重要であるとの視点から、「我が国においては、行政の効率化、質的向上のため、個人データをはじめとする行政情報の相互利用の拡大など情報処理の高度化が必要であり、また情報流通の国際化への対応も求められている。しかし一方では、これに伴い、個人データの結合・集中化あるいはその収集目的外の利用、誤情報等の流通のおそれ等国民のプライバシー侵害に対する不安感も高まっていくとみられるので、これに対する適切な配慮が重要である」として、「行政情報システムの進歩、国民意識の動向を踏まえつつ、諸外国の実態を十分把握の上、法的措置を含め個人データ保護に係わる制度的方策についても積極的に対応する。保護対策の推進にあたっては、関係省庁において緊密に調整協議を行う。」と個人情報保護対策推進の重要性を強調している。
政府では、この臨調答申を最大限尊重するとの基本方針の下に、最終答申の出された1983年5月に、「行政機関の保有する個人データの保護については、法的措置を含め制度的方策の具体的検討を行うものとする」との閣議決定(新行革大綱)を行い、臨時答申に沿って、個人情報保護についての具体的な対策の検討が行われることとなった。
1993年6月、臨調答申の趣旨を踏まえ、行政情報システムに関する各省庁共通の基本的事項の検討を行う各省庁の官房長からなる「行政情報システム各省庁連絡会議」が発足し、個人情報保護対策については、1984年4月、同連絡会議の下に各省庁の関係職員で構成する「データプライバシー保護専門部会」が設けられた。