12歳以上のマレーシア市民は、身分証明番号を印字したIDカードを取得しなければならない。IDカードは、紙製でラミネート加工されているものである。
マレーシアの身分証明番号の利用範囲は幅広く、納税、社会保障給付、運転免許証やパスポートの取得、投票等の行政サービスの場面はもちろんのこと、ローンや奨学金の申し込み、銀行口座の開設、住宅の取得等においても身分証明番号の提示が必要となっている。
(2) シンガポールにおける電子政府の取組み
シンガポールでは、1992年より、NCB(国家コンピュータ局)が主導する国家プロジェクトであるIT2000が進行中であり、現在、シンガポールの郵便局では、運転免許証の更新を行うことができるなど、行政サービスのワンストップ化に連なるサービスが実用化されている。実証実験を進めている領域は、必ずしも行政サービス分野に限られず、以下に示すように非常に幅広いものとなっている。
・ 行政サービスのオンライン化とキオスク端末の導入
・ 建設業と不動産業を統合した通信ネットワークの整備
・ 電子図書館
・ 遠隔教育
・ 電子カルテ
・ 遠隔医療
・ 仮想裁判所
・ ホテル予約のオンライン化
・ 入国管理、電子商取引への指紋認識技術の応用 等
このプロジェクトの開始時期は、非常に早かったために、すでに稼動しているオンライン・システムの中には、インターネットを前提としていないものがある。このため、現在ではこれらのシステムをインターネットで利用可能とする作業が進められている。
1988年に、世界に先駆けてISDNを導入したシンガポールでは、現在既に、全島における通信ネットワークのデジタル化が完了しており、今後は、様々なオンライン・システムがインターネット対応となるに従い、全企業及び全家庭を対象とした電子化の動きが加速されることになろう。こうした社会インフラを前提として、シンガポールでは、通信ネットワーク上での本人確認手段の確立を目指している。
(3) マレーシアにおける電子政府の取組み
マレーシアでは、1995年からマルチメディア・スーパー・コリドーと呼ばれる国家プロジェクトが進行している。このプロジェクトでは、首都のクアラルンプールに隣接する特別地区を設定し、その区域内に高速の通信ネットワーク環境を整備した上で、電子政府、多目的カード、教育、及び遠隔医療の4領域におけるアプリケーション・システムの実証実験を行っている。
こうした中で、特に実用性の面で注目されるのは、多目的カードの領域である。電子政府による公共サービスを受ける場面や、遠隔医療や遠隔教育を受ける場面において必要となる本人確認の手段として、ICカードを利用しようとするものである。政府は、将来的には、この多目的カードを全国民に配布することを検討しており、ICカードを利用した本人確認の仕組みの確立を目指している。