に政府の係官が各戸をまわり、徴兵事務に必要となる氏名、生年月日、婚姻の有無、職業等の登録が行われた。国民には各人の登録番号を記載したIDカードが交付され、携帯及び提示が義務づけられた。IDカードの提示を拒否すれば逮捕されることになった。当時の制度は、食料や衣料の配給事務における重複配給の防止、死亡兵士の関係者の確認、税金等の徴収事務等に利用されたが、非政府組織のイギリス赤十字による傷痍軍人に関する調査活動等にも活用された。終戦後に制度の廃止を求める世論が高まる中で、1952年にようやく廃止されるに至っている。
こうした歴史的背景がありながら、近年、IDカード導入を巡る議論が高まっている。IDカード導入に対する反論は、個人の自由やプライバシーの問題に集中していたが、1992年のマーストリヒト条約調印後に増加した不法移民への対抗手段としてIDカード導入が有効であるという考え方が、現在では大勢を占めている。
なお、個人コードと関連する点に関して、協議書では、ID力一ドの形態として、以下に示す6つの選択肢を挙げている。
?@ 現状維持(新たなIDカードを発行しない)
?A EU域内での旅行用身分証明書
?B 写真付き運転免許証
?C 運転免許証兼IDカード
?D 多目的カード(スマートカード)
?E 携行義務のあるIDカード
これらの選択肢のうち、電子政府のインフラとして期待が持てるのは、?Dの多目的カード(スマートカード)であろう。
(4) 政府の“ガバメント・ダイレクト”構想
次に紹介するのは、1996年11月に内閣府のCITU(Central Information Technology Unit)より発表された、電子政府に関する構想書(government.direct/A prospectus for the Electronic Delivery of Government Services)である。
この中では、“ガバメント・ダイレクト”の基本方針として以下のものを挙げている。