(2) NI番号が利用されている行政サービス分野
国民保険制度の保険料は、原則的に所得に応じて拠出されるものであり、給与所得者の場合、給与所得に応じた金額を事業主と分担して拠出している。もともと社会保障省が保険料の徴収にあたっていたが、1988年の所得税及び法人税法の改正により、第1種保険料と呼ばれる被用者(給与所得者)が納める保険料が、所得税と同じ源泉徴収方式で徴収されることになり、現在では、保険料の大半を歳入庁が徴収するようになっている。
現在のNI番号は、保険料の徴収及び保険金の給付手続きに必須の番号であると同時に、歳入庁による所得税の徴収事務において利用される個人別整理番号を兼ねているのである。
1991年からは、保険料及び所得税の徴収以外に、以下に示すような社会保障分野においても、NI番号が使用されることになった。
・ 年金
・ 失業
・ 生活保護
・ 児童給付 等
(3) IDカード導入を巡る議論
イギリスにおける個人コードの今後の動きを占う上で注目すべきものとして、IDカード導入を巡る議論について紹介する。
1995年5月、イギリス政府は「IDカード導入に関する協議書(Identity Card/A consultation Document)」を発表し、広く国民の意見を求めた。
イギリス政府が実施した世論調査によれば、国民の75%はIDカードの導入に関して積極的な考え方を持っており、その具体的なメリットとしては、身分を証明する確実かつ信頼できる方法となること、公共サービスの利用が容易になること、警察による犯罪防止に役立つこと、若年者によるアルコールやタバコなどの購入を防止できること等が挙げられている。
イギリスでは、第2次大戦中から戦後にかけて、IDカードが発行されたことがある。第2次世界大戦の勃発後の1939年に国民登録が制度化され、9月29日という特定の日