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あうことは想定されていないが、一方で、住民記録情報および共通番号は、民間においても利用できるようにした方が、多くの経費をかけたシステムのメリットがより大きくなるということもいわれているところである。

 

1-2-2 国民のコンセンサス

 

統一個人コード導入で今後さらに、検討・議論されなければならないことは国民の合意形成であろう。先の事務処理用統一個人コード導入の検討においては、各省庁の事務処理の効率化が中心であり、国民側のメリットはかならずしも明確にされなかったと考えられる。今後統一個人コードの導入を検討する際には、今までの経緯を踏まえた国民の合意形成が不可欠であると考えられる。

複数のアプリケーションがそれぞれ完全に独立して処理されている限り、そこで使われている個人コードを統一することによる効果はほとんどない。欧米諸国において実施されている例えば、郵便局で旅券の更新を可能にする等、担当組織や担当省庁を超えた機関から処理が要求される行政サービス(マルチアクセスサービス)の場合や、1か所で申請することによって関係機関の関連ファイルを一連で処理してくれるワンストップサービス、住所変更の一元的な処理や住民登録をしている市町村以外からも住民票の写しが入手できる等の新しいサービスにおいても、既述の住民記録システムのネットワーク化と統一個人コードの導入が必須である。プライバシー保護やセキュリティ対策を前提にして、ワンストップサービスや、マルチアクセスサービスのような新しいタイプの行政サービスの実現というメリットを期待してこそ、この統一個人コードの導入に関する国民的合意形成の議論が現実的になるのである。

この個人コードは、ネットワークを活用した行政サービスの実現に必要であるというメリットに加え、これが国民の公的な身分証明になりうるという期待もある。これは、国民のコンセンサスを得るためにも重要なポイントである。国民が行政からサービスを受けるという関係において住所、氏名、性別、年齢の4情報は、基本的な情報であり、この4情報とそれにリンクされた統一個人コードは、行政サービスを受ける際の認証・識別手段になるからである。従来、我々日本人は、公的な身分証明手段を持たず、運転免許や保険証で間に合わせていたが、ネットワークを通じて行政サービスを受けようとするとこれら間に合わせの本人確認手段では対応できなくなることは明らかである。

 

 

 

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