(C) 対象データ
個人情報保護法において定義されている「個人情報」は、個人情報の内容とは関係なく、個人に関する情報全般を対象としている。いわゆる「プライバシー」という概念を採用していないことになるが、逆に、個人に関する情報であれば、それがプライバシーであるか否かは問わないこととなり、より広く個人情報が保護されることを意味するものである。プライバシーの意味や範囲が個人によって異なり、法律で保護するには定義しきれないという事情もあると考えられる。地方公共団体においてもプライバシーという用語で条例を定めている団体はない。
法人データについては、保護法では対象データに含めていないが、地方公共団体では、30パーセント以上の団体が保護の対象としており、両者の違いの大きい部分である。国の場合、民間企業のデータは統計法や個別法の規定によって保護されることになる。
(d) 記録項目の公表
保護法においては、各行政機関が保有する個人情報ファイルの事項について、収集の事前通知や、一般の閲覧に供することを定めているが、地方公共団体の条例においては、記録項目の公表を規定している団体は47パーセントにとどまっている。
(e) 利用・提供制限
国と地方公共団体間の最も大きな違いは、いわゆるオンライン結合禁止条項といわれるものである。この条項の典型的な規定は、「市長は電子計算組織を国または他の地方公共団体とオンラインで結合してはならない。」というものである。この条項は、地方公共団体へのコンピュータ導入が開始された当時、住民の権利・利益が侵害されないようにという趣旨で設けられたものである。しかしながら、この条項には多くの場合、その趣旨を表現する意味での前提条件が記述されていないため、個人の権利・利益の侵害の可能性の有無とは全く関係ない場合でも、オンラインによる情報伝達を禁止することになっている。ネットワーク社会において、地方公共団体自らが手足を縛っている状況になっており、今後のネットワークを活用した行政サービスの展開に足かせになっているのである。このオンライン結合禁止条項については、自治省に設置された第一次個人情報保護対策研究会の報告書(昭和62年10月)において、「オンライン、磁気媒体による提供については、個人情報保護のための措置を十分に講じることを前提とすること。