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以上の検討結果から、?及び?は事実上実現は不可能であり、?または?が実現可能となる。しかし、?は沖島〜本土間に4事業者の航路が運航することとなり、利用者の数が限られていることから航路運営や採算上で問題が多い。他航路の調査でも明らかなように、航路の集約は大きな効果をもっており、その意味でも?の方式がもっとも望ましい。

いずれの方策を導入するにしても、住民、既存事業者、地元自治体が話合いを進め、合意を得ていく必要がある。

 

2. 沖島航路の維持、振興等を進めるうえでの課題

 

沖島航路の維持、振興を検討するうえでの最大の課題は、「住民ニーズ(増便、堀切寄港)を満たすために必要な運航体制を将来にわたって安定して実現するためにはどうすればよいのか」である。先に述べたとおり、住民ニーズを満たす運航体制としては「?現在の2事業者及びスクールボートの運航体制はそのままで、別の事業者が堀切〜沖島間の航路を新設する」及び「?現在の2事業者及びスクールボートは廃止して、新たな事業者が住民ニーズに合った航路を開設する」があるが、?がもっとも望ましいと考えられる。いずれにせよ、沖島住民(人口約600人)の利用だけではこの運航体制を維持することが困難な場合も考えられる。したがって、住民以外の航路利用によって、利用者の増加を図ることが、安定した経営を維持するためにぜひとも必要になる。

現在、沖島航路定期船利用者の中に観光客はほとんどいない。その理由は、島外からの観光客が午前11時台の定期船で島へ渡ると、その日のうちに沖島を出る便はないため、本土へ帰れないからである(島へ宿泊すれば、翌朝7時〜8時台の便を利用できる)。したがって、近江八幡市の観光協会や旅行代理店では間合わせがあっても沖島への観光を推めにくいという状況になっている。

しかし、観光関係者は沖島の観光ポテンシャルを高く評価しており、交通利便性が改善されれば、多数の観光客の入込みが期待できると見なしている。近江八幡市内には「旧市街の歴史的町並み」、「水郷や琵琶湖の自然景観」、「淡水魚を中心とするグルメ」、「西国札所の長命寺」、「ロープウェイのある八幡山」、「国民休暇村」などさまざまな観光拠点があり、年間の観光入込客数は170万人に達している。これの拠点を訪れる人が沖島へ足をのばさないのは、先に述べたとおり交通手段が不十分なためである。したがって、沖島航路が増便されて利便性が向上すれば、沖島をとり入れたさまざまな観光ルートの設定が可能になり、近江八幡市全体への観光入込客の増加と沖島航路利用観光客の両方の増加は十分期待できる。

沖島航路を住民ニーズを満たす運航体制とし、しかも健全な経営を維持するための行政の課題は以下のとおりと考えられる。

 

 

 

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