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(2)調査研究の対象範囲と方法

本調査研究を開始するに当たっては、市町村における「統合型GIS」に的を絞り、現地調査も含め集中的に検討を進めることとした。さらに、「統合型GIS」のビジョンをデータ・システムインフラ・運用・推進整備の各側面で整理するとともに、実現のための課題に関して、地方公共団体におけるGISの現状と将来の方向という観点から重要なものについて検討を行うこととした。具体的に、本調査研究において検討してきた内容のうち、主要なものは以下のとおりである。

 

(a)GISが先進的に利用されている埼玉県白岡町・神奈川県横浜市・滋賀県長浜市・長崎県長崎市における利用実態を分析し、利用面での課題を抽出するとともに、主要な課題に対する解決の方向性を検討していくこと。

(b)地方公共団体で利用価値が高く、複数業務分野で利用可能なデータを、「統合型GIS」における庁内「共用データ」**として、その内容を検討していくこと。

(c)住民基本台帳システム等、地方公共団体の既存システムに蓄積されているデータと、GIS上のデータとの連携により、共用ニーズの高いデータを庁内で利用していくこと。

(d)地方公共団体において、空間データの初期整備や更新に要する経費の軽減を目的に、公益企業等の民間団体が整備しているデータを利用すること。

(e)「統合型GIS」の整備・運用に際して、個人情報保護及び守秘義務の観点から、十分な対応措置を講じること

 

さらに、検討に当たっては、市町村における規模等の前提条件の違い、国際的な標準化の動向、そして、GISを円滑に普及させるために必要となる関連諸制度の整備について配慮したところである。

本調査研究を進めるに際し、産官学の識者から構成される調査研究委員会(親委員会)の下に、詳細な検討を行うため、自治体ワーキンググループとGIS技術ワーキンググループという二つのワーキンググループを設置した。自治体ワーキンググループは主として関係法令等の制度面に関して、また、GIS技術ワーキンググループは主として技術面に関して、統合型GISの検討を行った。

*注)「統合型GIS」

統合型GISとは、庁内で共用できる空間データ***を明確化し、その整備・管理を体系化することにより、運用に際し複数部署でシステムが異なる場合でも、必要なデータの共用を実現している情報システムの形態のことをいう。システムの管理を含め、管理運用面での組織体制と制度が整備されていることが必要条件となる。

 

**注)共用データ

共用データとは、庁内の複数部署において、共通に利用できる空間データである。特に、統合型GISで検討される共用データとは、多くの部署において、自由に多目的な活用を行うことが可能であり、かつ品質の保証されている空間データを指す。

 

***注)空間データ

空間データとは、国際標準化機構(ISO)において、「地球上の位置と直接又は間接的に対応づけられている対象物または現象に関するデータ」と定義されている。統合型GISで検討されるデータ範囲は、以上の空間データの中で、特に地方公共団体との関係が深い部分である。

 

 

 

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