8. 本事業の成果
我が国の造船・舶用工業は、造船不況期の構造調整等の苦難の時期を乗り越えながら、世界の新造船建造市場で高いシェアを維持し、国際的リーダーの地位を占めてきた。
ここ数年間の新造船受注高、手持ち工事量は比較的順調に推移してきたが、世界の新造船供給能力の拡大、2000年以降に予想される新造船需要の低下とそれに伴う国際競争の激化、労働需給の逼迫等、今後の造船・舶用工業を取り巻く環境は、大変厳しい情勢にあることが予想される。
造船関連産業のシェアの維持と造船関連産業全体の生産性の向上は、我が国造船・舶用工業の競争力維持にとって重要な課題であり、個別企業、個別業界内での業務合理化、経営基盤強化の枠を越えた企業間、産業間全体での基盤強化の必要性が認識され始めている。
このような状況認識の下、本事業においては、情報化技術の現状を調査し、造船・舶用工業の高度情報化の全体的な基本構想の策定と、基本構想の実現へ向けての中長期計画、短期計画を作成した。
その成果は次のように要約できる。
?造船・舶用工業の高度情報化は、それ単独では、生産性の向上、就労環境及び雇用条件の一層の改善、為替変動への対応、安全・環境問題への貢献等の我が国造船・舶用工業が抱える基本的な課題に対する万能な解決策とは言えないものの、事業環境変化に対応した業務改革、業態変革を進める上で情報化技術を活用することは、基本的課題の解決に道を拓く有力な手段である。
?造船及び舶用工業市場は、国際的に開かれた市場であり、その需要は海運市況に大きく左右されるものになっている。今後とも、我が国の造船・舶用工業が魅力ある産業として発展していくためには、国際競争力の維持・強化、さらには需要変動に対応した適正な生産体制の構築、生産性の向上、工期短縮、技術力向上という観点から業態の変革を含む業務に見直しが必要であり、その重要なツールとして、高度情報化を捉えることが必要である。
?造船・舶用工業の基盤強化の方向としては、次が考えられる。
・得意分野への資源集中と外部資源の有効活用等による企業連携の強化
・設計・生産・取引等に関する業際・企業間業務の効率化
・船社ニーズの先取りと海洋開発機器の開発、保守サービスの事業化等の新規市場の創出
・新生産システム等柔軟な生産体制の構築による需要変動への対応
・生産工程のシステム化
・研究資源の集約と研究開発の効率化