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現代の産業競争は、産業基盤間の競争という次元でとらえることが必要である。産業基盤間での競争であるから、多くの事業者が高度情報ネットワークに参加、能力を発揮していくことが、個別企業の競争力強化にとっても条件となる。

造船・舶用工業の経営基盤及び生産基盤強化は、各社毎の生産性向上努力によるだけでなく、事業運営上の規模の拡大による効率の向上を目指すことも重要な方策であり、設備の集約や企業の吸収合併という実現に向けて困難を伴う手法のみならず、機動性を発揮できる産業基盤、一層のコスト低減を可能にする産業基盤、さらに重要な視点として知識集約等による技術開発基盤、産業の未来を先取りして新サービスを創出する機会費用の敷値を低くするような産業基盤の形成という視野に立って取り組んでいく必要がある。

長期的には、バーチャル・エンタープライズのような協業形態が、容易にできる産業基盤を形成するといった戦略をもって高度情報化の計画を作成、その推進に取り組んで行く必要があろう。VEというと現時点では遠い将来のことのように思われるかもしれないが、経済的な船舶を大量に短期間で建造するという点でも実はかなり具体的なソリューションと思われる。複数企業間でプロダクトモデルを共有し、それをもとに編集設計を行い、建造のシミュレーションを行って早期の建造習熟と建造ノウハウの共有を図るといった方策は、技術蓄積の高い比較的多数の造船所が存立するという我が国造船業の構造に当てはめてみた場合、現実的な解ではないだろうか。将来的には、大口商談における共同受注が単独受注と同様な機動性をもって実施できる、同一の基本図を元に複数の事業所に適合した工作要領を展開できる、設計段階から機器メーカーが参画し機能系統毎の作り込みを行う等の展望をもって高度情報化に取り組んでいく必要がある。また、舶用機器のシステム受注と共同設計・システムインテグレーション、機器部品の共通化等による複数機器メーカーでの共同調達、保守のための情報管理会社の設立等、中堅中小企業が大勢を占める舶用機器メーカー間での柔軟な協調形態による技術開発力と生産力、保守サービスの強化を見据えて高度情報化に取り組んでいく必要がある。

長期的な視野をもつと同時に、業務革新を進めながら、業務革新の中でその段階、段階で現実的な高度情報システムを活用していくという展開が情報化計画に求められるところである。

高度情報化ツールについても、長期に亘る研究開発の成果をいきなり市場に投入、あるいは実運用に供するのではなく、市場で評価・改善しながら、発展させていくという逐次スパイラルな取り組みが必要であり、そのための技術的下地の形成が不可欠である。

また、技術的な下地の形成に加えて、個々の事業者の情報処理能力を高めていくとともに、相乗効果を発揮できるような産業の基盤を早急に確立していかねばならない。すなわち、技術、産業利用の両面から、高度情報化の姿に到達するまでの戦略を描かなければ片手落ちということになろう。

 

 

 

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