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技術的には、NIIIP(National Industrial Information Infrastructure Protcol)プロジェクトや我が国の高度造船CIMプロジェクト等の研究開発によって、課題の解決の方向がみえてきた。

一方で、業務の高度情報化は多大なコストを必要とするものであり、普及の促進のためには、その進捗プロセスにおいて随時メリットが得られることが望ましいが、短期的には、造船・舶用工業間での取引や技術情報の情報交換を行ったり、舶用機器の情報をインターネットを介して収集するといったことで、企業間の調整等で発生する無駄や設計仕様の不十分さから起こる手戻り等の手間を削減できる情報技術面での、コスト効果の高い環境が形成されてきている。

例えば、船内プラントのモジュール化等による生産分業のような協業の形態について、舶用機器のモジュール化やシステム化、取り付け等のスタンダード化が進み、代表船型毎にアセンブリ・モデルの雛型ができ、技術情報交換の規約が整備されれば、プロダクトモデル迄は援用せずとも、仕様の変更調整等がかなり容易になると思われる。

したがって、短期的には、現在の情報化ツールを経営に取り込んで、個別企業の情報処理能力を向上させるとともに、情報ネットワークの範囲を拡大していくことが現実的なアプローチであると考えられる。

次に、造船・舶用工業におけるライフサイクル・サポートは、現在の船舶マネジメント会社等による保守という観念にとらわれずに、サービスの創出、業態改革に向けた取り組みを進める必要があろう。革命的ともいえる情報化技術の発展の中で、現代の競争においては、グローバルな情報ネットワーク形成によって、保守専門会社などのニュー・ビジネス・カマーが出現し、運航会社も含めた造船関連産業の競争の構図が一気に変わる可能性を秘めている。

例えば、運航コストの低減と安全性の向上は、船社にとっても喫緊の課題であり、海務コストの削減に加えて工務コストの削減、工務要員の早期養成、早期戦力化は、船舶マネジメント会社、オペレータ等が競争力を維持していくために不可欠な課題であろう。さらに、大手船社は、工務部門を内部に抱えることができたとしても、中小の船社ではコスト、人材の両面から信頼のおける第三者機関に、要求仕様の策定、建造管理や保守をアウトソーシングするといったことも現実的なニーズとして上がってこよう。船社のコスト、人材、舶用機関のオンラインモニタリングによる予防保守やグローバルな補給体制の確立による船舶の稼働率の向上といった課題に対して、造船関連産業に期待される役割も高まろう。このような視野でライフサイクル・サポートのための情報ネットワーク形成といった課題に取り組んでいく必要があろう。

造船・舶用工業の高度情報化の中長期ロードマップは、個別企業の競争力強化、産業の水平、垂直分業による競争力強化、サービス創出の観点から整理し、このような観点から、中長期計画は、図表II.7.2-1に示すように大きく2フェーズに分けて、そこで必要となると思われる機能とそれにより実現される効果をマップした。

 

 

 

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