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7.2 高度情報化実現のためのロードマップ

前節では、業務革新と情報化ツールの側面から、高度情報化機能の実現手段と課題について検討した。

本節では、造船・舶用工業の高度情報化の全体的な基本構想を実現するための道筋として中長期ロードマップ、及び高度情報化を進める際の短期のフレームワークを提案する。

 

(1) 中長期ロードマップ

造船業は、個別受注生産型の巨大な組立加工産業であり、造船所の取引範囲は、舶用機器等を供給する舶用工業、資材を供給する鉄鋼等の素材産業、顧客である船社、検査等をとり行う船級協会等の広範囲に及んでいる。また、船舶そのものが巨大な輸送機械であるという特徴から、舶用機器は、主機、補機、係船・荷役機械、航海計器をはじめその品種が多い。これら品種当たりの舶用事業者数は、必ずしも多くなく、事業者の事業規模も中堅中小が中核をなすという構造になっている。

最終製品としての船舶のセットアップを業とする造船業は、大手7社や、中手十数社、及び中小の造船業から構成され、自動車産業のようにセットアップメーカーを頂点に部品メーカーの系列が形成されているわけではなく、海外調達、海外輸出も一定の割合で存在している。このような取引構造において、高度情報化を推進する際には、国際間取引もカバーできるオープン・ネットワークの形成がその重要な戦略になると思われる。オープン・ネットワークとは、ネットワークに参加しようとする企業・機関にとって、企業間組織、情報技術、参加コスト等の面において、開かれたネットワークを意味する。

近年の情報ネットワークを基盤とした高度情報化は、参加機関が増えれば増えるほどお互いの効果が高まるという相乗効果の特質をもっている。また、高度情報化ツールは、使いながら実証し、改良し、実用的な洗練の度合いを高めていくという側面を強くもっている。このときに、一度開発、投資した資産が無駄になるようなアプローチは避けねばならない。時間、空間的な相互接続性、相互運用性を強く意識したシステム間のインターフェースの標準化等の取り組みが必要である。

造船関連産業を形成する個々の企業が経営・業務基盤を強化するために情報化ツールを活用していくことも重要なことであるが、取引範囲が極めて広い造船関連産業においては、個別企業の取り組みだけではコスト削減や工期短縮には限界がある。巨大なシステムの設計・建造・保守には、仕様、工程、物流等の調整、管理に多くの時間を費やさざるを得ないのが実情である。この意味で、個別の企業や業界の狭い枠に閉じることなく、企業間業務、産業間業務の合理化、さらには企業間、産業間連携を推進することにより未来の先取りに目を向けて行かねばならない。すなわち、前節までで述べたような業態改革による経営・生産・研究開発基盤の強化の観点から高度情報化を推進していく必要がある。

 

 

 

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