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5) ライフサイクル・サポート・チェインの確立

船舶は、契約・設計・建造、引き渡し後の運航・保守・廃棄等に至るまでのライフサイクルが長期に亘る製品であり、環境保護、安全性、経済性の観点から、船舶・舶用機器の保守等、ライフサイクル・サポートの向上は、海運、検査を含む造船関連産業として取り組むべき課題である。

世界レベルで海運・造船関連産業を眺めれば、保険コストと保守コストを比較した場合、保守コストの低減の方が経営に寄与する現状が保守水準の低下という悪循環を招いているといった側面を否定しきれない面がある。

現状、船舶の保守については、船舶オーナー、マネジメント会社等の海運業界のテリトリと目されがちであり、運航者等からの性能、機器・部材の故障・劣化情報等の造船業等へのフィードバックは断面的なものに限られている。

しかしながら、環境保護、安全性の向上、経済船型の開発等は、海運・造船・舶用工業界がさらに緊密に連携して取り組むべき課題であり、トータル・ライフサイクル・サポートの観点からの保守体制と保守サービスについてさらに検討を進めると共に、運航者からの情報のフィードバック等をより円滑かつコスト効果的に実現するような情報ネットワークを形成していくことで、舶用機器等の故障対応の迅速化はもとより、予防保守、さらには船舶・舶用機器の改良・新規開発等に資するものと考えられる。

省資源、省メンテナンス、低熟練乗組員での安全航行、自然環境の保全、海洋構造物・物流システムの合理化といった技術開発は、海運と造船・舶用工業との連携があってはじめて可能になるものであるとともに、その普及・実現のためには、船主に対する経済合理性を提供していく必要がある。

このためには、オーナー・ニーズの汲み上げとそのための船の運航に関するノウハウの蓄積と知識レベルの向上、保守容易性及び保守負担低減、多くのオーナー・ニーズに応えられる企画・設計・建造能力を海運、検査を含む造船関連産業全体として保持することが必要になろう。運航者からのフィードバックの仕組みを向上させるための第一歩として、例えば、海運業界と造船・舶用工業界が連携して、船種・船型毎の知識を集約する経済的な仕組みの確立等が求められよう。

また、船舶の運航、保守が、船舶オーナー、マネジメント会社、オペレーターと多様化している中で、船種によっても保守形態、補修部品等の調達形態や経路が個々別々になっている現状に鑑み、保守ネットワークの形成においては、効率的な保守ネットワークのあり方や補修部品のサポート、修繕所等へのグローバルな経済的供給体制の確立等について、船種毎等の舶用機器等の標準化も視野に入れながら、造船関連産業として検討を進めて行く必要があると思われる。

 

 

 

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