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(3) 今後必要となる情報化機能

ここでは(1)、(2)で論じてきた、経営・生産・研究開発における基盤強化の実現の為に必要な情報化機能について考察する。

先に掲載した図表II.6.5-1は、造船・舶用工業の基盤強化の方向と、それを高度情報化技術を用いて実現しようとする場合に必要な情報化機能を概観したものである。

今後必要となる情報化機能の第一は、業界、業際の連携を深め、効率化を促す電子データ交換(EDI)の推進である。取引、技術情報、及び承認/許認可に関するやり取りにおいて、各種ペーパーによる再入力作業や確認、手戻り、調整作業といった付加価値性の低い作業の合理化を進めるべく、コンピューター・ネットワークによる迅速な情報交換体制を確立する必要がある。我が国では、すでに船舶CALSなどのプロジェクトが開始されている。このような取り組みの成果なども含め、本格的なEDIを推進する必要がある。

第二は、業界、業際の密度が高い連携に基づく生産システムの強化である。技術力の維持・向上が造船・舶用工業における最大の競争力向上要因であり、各社のCIMシステムの整備を促進するとともに、業界全体の設計、生産、調達などの生産性を高めることが重要になる。協調作業を支援するワークフロー管理やシミュレーションによる生産ラインの事前検討をはじめとし、将来的には、ノウハウの継承を可能にする知識ベースの確立や、ある種のパターン設計のような業務の自動化を図るなど、知識の集約を進めることで、造船・舶用工業が、製品価値を工数ではなく知的付加価値に求めるような業態へと変化していく可能性に留意する必要がある。我が国では、すでに高度造船CIMプロジェクトが開始されている。これらの取り組みも含め業界全体の生産システムの高度化を図ることが必要である。また、バーチャル・エンタープライズも可能にする柔軟な業界構造の形成も視野に入れることが求められる。

第三は、船社など造船・海運産業全体の連携を強め、トータルな産業構造の再設計(BPR)を進めることで、新たな需要の創出やさらなる安全運航を推進する高度情報化の活用である。例えばグローバルなライフサイクル・サポート体制の構築など新たな枠組みづくりが今後の造船・舶用工業にとって重要である。

以下にこれまで述べた情報化機能についてまとめる。

 

 

 

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