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(3) 社会環境

社会環境をめぐる近年の特筆すべき点には、船舶における海上安全・環境保全への社会的要求の高まりがある。外航海運においてはISM*8コードや新STCW*9(STCW95)条約への対応といった問題があり、内航海運においては、内航船の近代化に関する検討や実証実験が行われている他、貨物輸送におけるモーダルシフトへの要求がある。

 

1) 安全・環境に対する対策

1997年隠岐島沖のロシア籍タンカー・ナホトカ号の沈没に伴う油流出・船首部漂流事故、同年7月の東京湾におけるダイアモンド・グレース号油流出事故が記憶に新しい。過去10年程の間にバルクキャリアの重大な事故に対して船級協会によるEnhanced Surveyが実施され、古船でメンテナンスが不十分なものが多く、船員の質を含めた海上安全性に対する要求が高まっている。また、地球環境問題においては1983年に発効された船舶もしくは陸上油保管施設による海洋の汚染を防止する目的のMARPOL*10条約及びORPC*11条約等が整備されているが、昨年採択されたMARPOL条約の1997年議定書において船舶から排出されるNOx及びSOx排出量に関する規制が導入された(議定書の発効時期は未定)他、1997年12月の「地球温暖化防止京都会議」への注目の集まり等、近年の環境保全に対する世論の高まりを一層考慮する必要があり、船舶のCO2の排出削減努力をはじめとした対策が必要と思われる。

 

2) 外航海運業

外航海運においては、営業上の観点から貨物管理等のための陸上との情報交換等船舶の情報化が進みつつある。さらに船舶管理体制に関するISMコードが1998年から施行される他、ポートステートコントロールや、乗組員の教育・船内でのwatch作業の質について取り決める新STCW条約への対応が要請されている。海運業においては管理体制の整備、オフィサーの質向上及び一定数の確保といった対策を進めているが、造船・舶用工業においても安全面において保守・修繕に関する品質保全に対する要求が高まると思われる。

 

*8ISMコード: the International Safety Management Code: 国際安全コード

*9STCW条約: the revised international convention on Standarts of Training, Certification and Watchkeeping for seafares

*10MARPOL条約: the international convention for the prevention of Pollution from Ships

*11ORPC条約: the 1990 International convention on Oil Pollution Preparedness, Responses and Co-operation

 

 

 

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