日本財団 図書館


(2) 競争環境

平成9年9月に運輸省が行った、造船25社に対する経営状況ヒアリング調査結果によれば、2010年までの造船市場における国際競争は大半が激化すると予測している。国際競争相手は韓国という見方が多く、韓国との競争力はほぼ互角か優位にあるが、為替動向によってそれは左右される、という見方が多いと報告されている。その他の競争相手としては、国策として造船市場に参入する気配のある中国や、東欧といった意見も出ている(「海運」1997.12)。

韓国においては、「造船合理化法」による設備新増設規制が1993年末に解除になったのを受け、2000年前後のVLCC代替需要を見込んで、ドックの新増設など設備投資を行い、併せて、これらにより建造される船舶用主機の製造ラインも増張し、1996年までには稼動が開始された。それと同時に労働者数もここ2年ほどで94年比30%以上も増やし建造体制を整えられた。図表II.6.2-2に1993年以降に韓国企業が新設したドックを示す。

094-1.gif

なお、韓国においては、1997年後半に金融危機によるウォン安及び財閥破綻があり、現在経済危機の状態にある。1997年12月に韓国政府が金融市場混乱対処のため、管理フロート制から完全変動相場制へ移行する等の安定策をとり、同月に漢拏グループが負債総額6兆4800億ウォンを抱え倒産した他、三美、真露、韓信、水山等の大企業グループが次々と破綻に至った。現在、韓国造船業界において手持工事量は最大といえるが、高い負債率等により収支率が低迷している。しかしながら1997年11月の韓国の経済混乱に伴うウォンの大幅な下落は、既に韓国の一部資機材の輸出力を大幅に向上させており、今後は投資の抑制や人件費カットがさらに進むことから、構造改革が加速していくと思われる。我が国の造船業にとっては、2000年以降の受注状況もさることながら、構造改革過程での韓国造船業の動きに留意する必要があると思われる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION