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第2部 高度情報化のための全体的な基本構想

 

6. 造船・舶用工業の高度情報化グランドデザイン

本章では、造船・舶用工業が今後15〜20年後迄のスパンにおいて健全な産業として発展していくために、どのような方策が採り得るか洗い出しをする。そのために、幾つかの段階に分けて議論することにする。最初に、造船・舶用工業を取り巻く環境、また両業界における課題について整理する。この課題には近い将来予想される事態に対する項目も含まれるが、その多くは業界において十年一日の如く議論されてきた課題である。第二に、造船・舶用工業を取り巻く環境を踏まえつつ、両業界において強化していくべき基盤の方向性を考察する。さらに、それらの基盤強化における方策について、情報化技術によって克服し得るものを中心に列挙していく。最後に、それらの方策を実行していく上で必要な高度情報化の機能を挙げ、さらに、それら機能の実現機能と効果について考察する。以上の議論によって造船・舶用工業を取り巻く課題の幾つかが高度情報化によって解決し得ることが理解されるであろう。また、次章では、本章における情報化機能を基に、その実現手段と課題を踏まえ、造船・舶用工業における高度情報化の道筋となるロードマップ案を提示する。

 

6.1 グランドデザイン策定の考え方

(1) グランドデザイン策定の背景とねらい

我が国の造船業は、戦後間もなく進水シェアで世界一になり、その後も高いシェアを維持し、世界の造船業をリードしてきた。造船業の競争力は、生産技術や開発技術の革新とこれを支える良質な技能労働力により達成され、過去10年間においても、自動化設備、CIMの導入等により、高い生産性の向上を達成している。

一方、我が国の舶用工業は、我が国造船業をはじめ韓国等世界の主要な造船業に近接するという立地上の優位、製造技術の改善、従業員の技量向上等により、シェアの拡大、生産性の向上が図られた。現状においては、船主等のニーズや市場の変化に適切に対応した高品質・高信頼性製品の供給、納期の正確さ、設計変更への柔軟な対応等が我が国舶用工業の競争力の源泉となっているが、逆に設計変更の煩雑さが生産性向上の障害となっている。

ただし、今後2010年までの期間を考えると、大きな事業環境変化が予想される。

今後の造船・舶用工業を取り巻く環境を展望すると、韓国の大幅な設備拡張、中国等の造船市場への進出、欧州、米国の助成制度の継続により、世界の新造船供給能力は拡大傾向にあり、2000年以降に予想される需要の低下と相まって国際競争が一段と激化し、船価や機器の価格に悪影響を与えるおそれがある。

 

 

 

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