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2.2 舶用工業における情報化の現状と動向

 

我が国の舶用工業は造船業と同様世界最大のシェアを有し、国内外の多種多様な船に、ディーゼル機関、電気機械、ポンプ、プロペラ、甲板機器、航海計器、制御機器など多様な製品の提供を行っている。

80年代からの情報化、エレクトロニクス化の流れは、舶用工業にも大きな影響を与えている。主なものは、?CAD/CAMの採用、?メカトロニクス化(自動化機械の採用)、および?船舶自体の高度化(自動化、省力化などの高付加価値船)への対応である。特に高信頼度プラントや高度自動運航システムなどに関連する舶用機器は、エレクトロニクス・情報化技術への対応が不可欠となった。

各企業における情報化の現状は、取り扱う製品や業態の違い、企業規模の違いが大きいため一律に整理することは難しい。この中で舶用工業の情報化に関する現状の特徴を整理すると図表I.2.2-1のようになる。

第一の特徴は、一部企業による調達業務の電子化を除いて、情報化が企業内にとどまっていることが多い点にある。大手企業ではCAD/CAMの導入により、設計プロセスの効率化と生産の効率的な工程設計、NCプログラミングを実施しているケースが多い。また、先進的なイントラネットを導入し、設計情報の管理や共有化を実施している企業もある。一方、規模の小さい企業や専業メーカーの一部は、伝統的な顧客との図面の受け渡しが単純に機械化されるだけでは情報化の効果が見いだせないため、情報化に消極的な企業もある。企業内の情報活用も、今後充実させることの余地が大きいと考えられる。

第二の特徴は、積極的な外部との情報交換の事例が非常に少ない点にある。高度情報化時代への対応、CALSに関する期待の高まりの中で企業間の情報連携に関する関心や評価は高まりつつあるものの、日本舶用工業会の調査では「CALSへの対応は重要だが、どこから手を着けてよいか分からない」とする企業が70%近くに上っている。

舶用工業を取り巻く環境は急激に変化しつつあり、一企業で解決できる問題は限定されつつある。このため、企業間の情報連携など業界全体のレベルアップを図る情報インフラの整備などが検討され始めた。日本舶用工業会では、平成8年度からの3ヵ年事業で「舶用工業の高度情報化の推進に関する調査研究」を進めている。この一貫として「情報サービスステーションの整備事業」で、インターネットを活用し、舶用メーカー会員間における情報交換の場の実践を提供する取り組みが行われている。

また、電子データ交換実験のフィージビリティ・スタディも開始されており、業界全体としての情報化の取り組みの形は出来つつあると言えよう。

 

 

 

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