(c) 選定方式の実用条件設定
実際の溶接施工におけるセンシング条件(レーザセンサの揺動条件)について説明する。原理からも明らかなように、開先情報はレーザセンサの揺動半周期毎に得られるため、レーザセンサの揺動速度が速いほど開先のサンプリング速度が速くなる。したがって、レーザセンサの揺動幅を必要最小限に、また揺動速度を速くすることが望まれる。板厚25?、開先角度50度、ギャップ5?の場合、開先幅は約30?となるので、レーザセンサの揺動幅は40?(開先を中心に±20?)とした。また、前回の揺動において得られた開先中心がレーザセンサの揺動中心となるように、すなわちレーザセンサも溶接間先を追従して揺動するように制御した。レーザセンサ揺動軸は、当社でのスライドブロックの製作実績から定格50?/秒とした。したがってサンプリング周期は約1秒となる。片面板継溶接速度の上限が約30?/分程度なので、溶接線方向に5?以内のピッチで開先をサンプリングできることになり、実用的に十分な検出性能が得られると判断した。
次に演算時間の観点から上記検出システムにおける構成部品の機種選定とデータ転送方式について検討した。図3.10は、レーザセンサ揺動動作の各区間におけるデータ処理内容を示したものである。A点からB点への揺動で得られた開先情報のデータ処理について説明する。まず、AからBでは、レーザセンサとポテンショメータ(揺動位置)の出力が所定のサンプリングピッチでA/D変換器のメモリに格納される。次に、BからCの区間(揺動の端部停止期間)では、上記データをボード型コンピュータに転送する。そして、CからDでは上記コンピュータにて開先形状を算出する演算を行い、その結果(開先ギャップ等)を溶接条件制御を行うシーケンサのCPUに転送する。なお、A/D変換器は上述のデータ処理が可能なFIFO(First-In First-Out)方式のものを採用した。なお、実際には揺動の右行と左行のデータを平均化してデータを転送している。