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6 近代化設備(居住区)の快適性

居住区の快適化も今回の近代化の大きな目的である。本船の場合もゆとりのある居住区面積の確保、設備の改善、振動や騒音の低減等の快適化を追求した。この成果と課題を要約して述べる。

 

6.1 居住区における振動・騒音

振動と騒音の低減が快適性の大きな要素であることはいうまでもない。本船は建造時においては船尾部の上方部の船体周りの流れの不均一に起因すると考えられる振動があり、その低減が課題とされた。このような振動は船尾形状の微妙な影響で少なからぬ小型船で生じており、本船の場合も船尾形状の僅かな変更が原因となったと考えられる。

そこで、この振動の原因となっている不均一流を消す為に船尾上方部の流れを制御するフィンを取り付けた。この結果として、振動は船尾端上下振動加速度で平均で50 gal.、最大で100 gal.程度となり、振動計測がよく行われている大中型船で50gal.程度と言われるから、ほぼその程度になったと思われる。

 

6.2 居住区等に対する運航員の所見等

居住区に対する運航員の評価を聞き取り調査した結果を要約すると以下の通りである。

 

○居住区の面積についてはほぼ内航船としては満足すべきであるという評価であった。本船の場合、年配の運航員が多いから従来の船との比較で評価されている可能性が強いが概して好評であった。

 

○個室はボートデッキに、共用室はアッパーデッキに配置した。これは本船の荷役時のことも想定しての選択であったが、満足しているとの評価であった。

 

○共用スペースについても、概して好評であった。

 

○設備の内、24時間風呂については何時でも入浴できるという利便性が高く評価されていた。厨房の能力を向上させる為に、万能調理機を設備したが、予想に反してあまり好評とは言えないようである。この調理機は焼くとか煮るとかの加工がプログラム化され、人手がかからずに調理できる能力があるという観点から設備したが、その豊富な機能のゆえに操作が複雑化し、使いこなすのが困難ということであった。使用法を巧くマニュアル化するとかの工夫が必要と考えられる。

 

○ロッカー等の保管スペースの増加が要望されている。運航員は個室を有しており、個室の収納スペースかと考え易いが、交代等の場合に私物を残したままで赴任したいということと理解される。場合によっては配乗の仕方に応じて、このようなきめの細かい配慮が必要と言える。

 

 

 

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