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3.5 研究開発動向

油処理は、化学剤等による化学的な処理と物理的な処理、いわゆる回収とに大別される。本節ではこれらの双方に関する最近の研究動向について調査した結果についてとりまとめた。

 

3.5.1 油処理剤

国内における油処理剤には、作用機構の異なる種々の薬剤があるが、現在国内では、形式承認を受けたゲル化剤と乳化分散処理剤のみが使用を認められている。このうち乳化分散処理剤は油膜に散布後、攪拌の必要があるが、海外においては撹拌を必要としない自己攪拌型乳化分散処理剤も使用されている。

ここでは、これらをはじめとした種々の油処理剤とその油種別効果や海象条件等への適応に対する研究動向について学術論文の検索や研究機関に対するヒアリングを実施した結果についてとりまとめた。

 

分散処理剤の適用については、効果大としながらも国によって取り組みの積極性が異なる。これは主としてその効果と生態系への影響について賛成派と反対派に分かれることによるが、双方その効果と安全性について明示できていない点に起因している。

Calhoun et al. (1997)は、メキシコ湾における分散処理剤適用規制の作成について述べている。彼らは分散処理剤散布が、メキシコ湾内における大規模流出事故に対する実行可能な第一の手段であると認識しており、第6管区地域対応チームとこれの担当区域の自治体が認定した油流出事故対応の際の分散剤散布、現場燃焼及び機械的回収を早急に決定できる新しい規定について紹介している。

この規定においては、初期対応における分散処理剤散布の決定と方法について、離岸距離、水深、風速、油種、API値、比重、油性として分散しやすいか、分散試験の必要/不要等、多くの条件を組み合わせて判断できるようになっている。これにより、地域毎の分散処理剤の使用種類、使用量、使用方法とこれに対する効果が評価できれば、分散処理剤使用のみならず、これの防除資機材としての役割付けが明確になるものと思われる。

また、Hanzalik and Hereth(1997)は、油流出事故対応時における分散処理剤の標準的運用方法について述べている。彼らは現時点の分散処理剤がメキシコ湾において効果的かつ準備可能な防除資機材であるにも関わらず、防除対応の指揮系統において分散処理剤散布に関する標準的な作業説明や運用方法の記述がない点を問題としてとらえ、実際的な分散処理剤散布作業のモデルを開発している。

すべての分散処理剤散布に応用できるこのモデルは、分散剤散布作業に含まれる責任所在と人員の現場調整を表現するだけでなく、作業のあらゆる立場における責任を明確に識別することができる。

このモデルを用いることにより、人員や資機材の現場調整・管理、通信の円滑化が図れるだけでなく、対応に関する民間組織と政府機関の間の意見の食い違い等を最小限にとどめることができる。これらの調整・管理は迅速な対応が必要とされる分散剤散布作業において、機材及び人員配置の効率化に大きく貢献することが期待される。

生態系への影響については、合衆国沿岸警備隊のWolfe et al.(1996)が、分散処理剤の使用が海洋生態系の食物連鎖における生物への影響について、生態系末端の油分解生物の活性変化

 

 

 

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