3.4.3 検査とメンテナンス
オイルフェンスの展張形態は、風、波、海流、潮汐等とともに変化する。係留状況は頻繁に点検し、再調整することがオイルフェンスの性能維持のために必要である。
包囲した油と瓦礫については、オイルフェンスの性能が低下することを防ぐため直ちに除去する必要がある。また、気温の日較差が大きいような条件下では、充気式オイルフェンス中の空気の膨張、収縮を考慮して気室からの空気の充排気を行うことが必要である。さらに海上交通の安全性確保という観点から船舶への告知や警告灯の設置等の対策をとることが望ましい。明るい色彩のオイルフェンスは視認性が高く、夜間においても灯火で確認しやすい。
使用後のオイルフェンスは洗浄する必要があり、通常はスチーム洗浄、油処理剤によって行うが、化学薬品を使用した場合には、これによりオイルフェンスの布地が損傷していないか確認しておくことが重要である。オイルフェンスの保管については、直射日光を避け、要請に対し直ちに使用できるように修理・保守を行う。
油回収装置の稼働時には、油が集油部に集まっていること、および収集効率を低下させるような瓦礫が集積していないことを確認するために監視が必要である。高性能を維持するためには、流出時の状況や油種に適合し、また油が集油部に入る速度にマッチするように回収速度を調節することが必要である。油が少量の場合には、間欠的な回収、あるいはロープモップを使用する等、必要以上に水を回収しないようにすることが望ましい。
使用後は、油回収装置を洗浄・オーバーホールして、磨耗・損傷を確認し、必要であれば修理する。油回収装置に付着した油は炭化水素溶剤等で除去することができるが、吸着モップおよびプラスチックディスクは、洗浄剤等を用いず軽油で洗浄するとよい。またこれらの樹脂製部品は、長期間直射日光に当たると劣化するので、保管場所に注意する必要がある。
3.4.4 まとめ
以上、外洋で油流出事故が発生した場合における防除資機材の運用は、沖合作業と沿岸作業に分かれる。沖合では、船舶、オイルフェンス及び油回収装置で構成される油回収システムによる機械的回収と航空機、船舶等による分散処理剤散布が主となる。しかしながら、特に荒天時の外洋における初期対応では、機械的回収はほとんど不可能である場合が多く、分散剤散布が検討されるが、これについても航空機の安全航行等の確保が必要になる。また、沖合作業では、船舶、航空機、作業員間の通信手段を確保し、作業の効率化を図ることが重要である。
沖合での回収・防除が不可能で、かつ流出油が沿岸に向かって漂流しているような場合には、沿岸海域を保護する必要が生ずる。まず、流出油の接近により、これの影響を受けやすい地域をオイルフェンスの展張により防御する。この時、水流が強い等の理由により油の保護区域到達前に包囲、回収が無理な場合には、オイルフェンスによる油の進路変更を試みる。このような沿岸におけるオイルフェンス展張においては、展張区域の底質に応じた係留設備を用いる必要がある。