我が国の油回収装置は、荒天時の対応となっていないことがわかる。
油回収装置においては、油の粘度が高くなるとポンプの効率が下がるので、回収性能はポンプに依存する場合が多い。高粘度または凝固した油に使用可能なスクリューポンプではホース配管や内部抵抗に対処するため、キャリア用の空気または水を大量に導入し、少量の油を混ぜることで対応する。また、w/o(water in oil)エマルジョンが生成され、粘度が上昇する場合にはエマルジョンブレーカを使用する。
表3-2-10に波高2m以上の条件下で稼動可能な油回収装置の例をいくつか示した。回収原理はFramo/NOFO Transrec. System 350以外は、いずれも付着式であるが、付着式においては、吸着プローブ部分が動揺しても海中に浸すことが出来るため、ある程度の荒天時においても他型式の回収装置よりも稼働効率がよいものと思われる。一方、同表に示したFramo/NOFO Transrec. System 350の性能は、同システム構成の中の堰・吸引式スキマーユニットのものであるが、このシステムは本来単体でなく、堰・吸引式、ディスク式、ベルト式の各スキマーユニットと移送ホースで構成されるパッケージであり、事実上、世界最高の荒天対応性を持っている。本調査で得られた稼動条件において有義波高、風速、双方について明示しているのは、このシステムだけであったが、このシステムとて稼動限界波高は3.5mであり、Nakhodka号事故発生時の波高が6mであったことを考えると荒天時の外洋における稼動はかなり困難なものと思われる。