また、平成7年4月に第三管区海上保安本部に編成された機動防除隊は、高度な専門知識・技術を活用して、流出油の防除措置及び流出に伴う海上火災の消火、ならびにこれらの措置に係る指導・助言及び調整を行う。
自衛隊は、防除資機材の輸送について、関係行政機関または地方公共団体から依頼があった場合、輸送の必要性を判断し、航空機、艦船等の輸送手段により支援を行う。
油が海岸等に漂着した場合、関係行政機関、地方公共団体等は、防除措置の実施状況を把握するとともに、迅速かつ効果的な防除作業が実施されるよう、関係機関の出動可能勢力、支援体制等の情報を収集・整理するとともに、船舶所有者等の関係者に対して情報提供を行うよう努める。
(5)防除対応訓練
関係行政機関、地方公共団体等は、油流出事故への対応を迅速かつ的確に実施するため、関係機関相互の連携に重点を置いた総合的かつ実践的な訓練を排出油の防除に関する協議会等を活用して行うことになっている。
日本国内における防除対応訓練は、主として海上保安庁、海上災害防止センター及び石油連盟(PAJ:Petroleum Association of Japan)によって実施されている。また、官民合同の調整・防除機関として、排出油の防除に関する協議会等の防災組織が、平成7年度末現在で全国に93設置されており、油流出事故発生時における関係機関相互の連絡の緊密化、事故対策の策定、資機材等の備蓄整備、海上防災訓練等が実施されている。
海上保安庁では海上災害防止センターの指導・監督を実施しているが、海上災害防止センターの業務の一つに海上防災訓練業務が挙げられる。この業務においては、タンカーに乗り組む上級船舶職員、石油関連施設の従業員等に対する消防実習、油防除実習など各種研修訓練を実施しており、この訓練には平成8年度末現在約40,500人が参加している。
また平成8年3月には、海上災害防止センターに実際に油を使用した回収装置の操作等が可能な訓練水槽、漂着油の回収・清掃実習のための模擬海岸プール、流出油拡散予測等のシミュレーション実習のための研修棟等から構成される流出油防除訓練施設が完成しており、この施設による流出油防除訓練の充実化を図るとともに、実践的な3種の訓練コース、1)海洋汚染対応、2)海上汚染実習、3)沿岸汚染実習を開設し、油防除対応の人材育成のための訓練を実施している。
PAJによる訓練は、PAJの基地が主体となり、資機材の維持管理者が中心となって、独自に緊急時を想定した演習を行い、あるいはPAJ加盟会社の防災担当者または石油連盟海水油濁処理協力機構(POSCO:PAJ Oil Spill Cooperative Organization)とともに演習を実施する。これ以外に石油連盟は、資機材の実地操作訓練講習会として資機材のメカニズムとシステムの学習のための座学と実際の資機材の操作及び反省会をプログラムとした2日間のトレーニングコースを実施している。
また、上記の訓練に加え、必要に応じて上記各関連機関間の合同訓練が行われる。