海岸付近の漂流油の回収には、石油連盟所有の堰式(ウェヤタイプ)・回転式(ディスクタイプ)油回収装置、及びビーチクリーナーが使用されたが、回収装置、特に堰式(DESMI-250、GT-185)は海岸線付近の水深が浅いことと油が高粘度化していることから、主として汀線から貯蔵設備へ送油するためのポンプとして使用された。
また、バキュームカーは、海岸線から直接、あるいは貯蔵設備間の移送用にドラム缶から油を吸い取るために使用された。コンクリートポンプ車は、吸引力が弱い反面、吸入配管が長く、荒天時の遠隔操作回収に威力を発揮した。
海岸に漂着した油は、主としてボランティアを含む多数の人の手作業により回収が行われた。また、砂浜に漂着した油については、ブルドーザー、バックホー等の重機により集積後、油と砂にふるい分けされた。固形化した油については、一度放水によりこれを水面に流し、水面から油を回収するという方式がとられた。
表2-2-2は、この油流出事故における流出油の沖合での機械的回収量を回収油水中の油分量を仮定して推定したものであるが、機械的回収がいかに困難であるかがわかる。
(3)被害状況及び回復状況
流出油は1月8日、福井県、石川県の海岸に漂着した。漂流油は、1月20日には能登半島北側を越え、新潟県佐渡島にも漂着、その後本州側の新潟県にも漂着した。油による汚染範囲は、島根県から秋田県(富山県を除く)にわたる1府8県に波及した。また、これによる、防除出動人数は、自衛隊およびボランティアを含め延べ772,000人、流出油回収量は、47,000kLに上り、事故発生から船首撤去まで103日間の日数を要した。
京都府は、平成9年12月、ナホトカ号重油流出災害による環境影響とその回復状況についてまとめている。これによれば、現在、沿岸及び沖合の水質・底質、大気環境、水産資源、海浜植生、海藻、海鳥について流出重油の影響は認められないか、きわめて軽微な状況となっている。また、この他、生態系等自然調査として岩礁域生物調査、砂浜生物調査、鳴き砂の調査等を実施していくこととしている。