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2.2.3 Arisan号油流出事故

(1)発生状況

1992年1月12日、鉱石140000トンを搭載したバルク・キャリア「Arisan号」が、ノルウェー西岸、ルンド北西で座礁し、約150トン(約0.2kL)の燃料重油が荒天時下、波高5〜6mの海上に流出した。

 

(2)対応

Arisan号座礁の通報後、国家汚濁管理局(SFT:Norwegian Pollution Control Authority)地区当局に対して警報が発令され、西海岸現場に指揮拠点が設置された。自治体に対しては、特に敏感な区域保護のため近隣補給所から提供可能な機材をすべて使用するよう指示が出された。これにより、自治体の備えている防除資機材が動員され、第一報から5時間後には、最初のオイルフェンスが展張された。

事故発生当時、燃料搭載量は700トンと見積もられ、船体破損前に緊急荷下ろし作業がSFTとノルウェー海事理事会によって敢行された。Arisan号は他の船舶が横付けできない場所に座礁していたため、ヘリコプターによりポンプとホースを船上に運搬後、油抜き取り作業が行われ、520トンの燃料油を回収した。

海上に流出した油の回収には荒天のため、外洋用のオイルフェンスが使用された。通報から12時間後には、オイルフェンスと油回収装置からなる4組の回収システムが使用された。この作業においては、ロープモップ式回収装置とフォックステール型やTramsrec.型回収システムが使用された。4時間の作業で10トン、24時間後には27トンの油が回収されたが残りは海岸線に漂着した。

気象条件から考えて、大部分の油が海岸に到達することは明らかであった。これに対応すべく国家汚濁管理局(SFT)の現場指揮官と自治体や、地元関係当局のスタッフが油到達予測地点に指揮拠点を設置し、航空機および現地踏査により汚染範囲を調査・確認後、損害の危険度に従って浄化区域の優先順位を決定、洗浄・回収作業が実施された。これにより、作業に必要な人員数や資機材を的確に配置することができた。

 

(3)被害状況及び回復状況

ノルウェーの鳥類重要種の保護区域であるルンド(221種(200,000羽以上)の鳥類が生息し、その幾種類かは絶滅危惧種。)は、海岸線が30km以上にわたって汚染され、防除作業は延べ4560日に及んだ。この期間内で約3000羽の海鳥が死亡し、その死骸現認範囲は、海岸線190kmにわたった。

幸い油流出事故の発生が、これらの海鳥の営巣時期よりも前であったため、この程度での被害で済んだが、もし事故が営巣時期と重なっていた場合には、さらに甚大な被害になったものと予想される。

Arisan号からの油流出は、大規模な流出事故ではなかったが、約150トンの流出に対し、作業コストが約500万米ドルに達した。しかしながら520tの油の緊急抜き取り作業により防除作業経費が大幅に軽減されたことは想像に難くない。

 

 

 

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