1)トレンチング(溝掘り)
2)スクレーピング(かき取り)
3)高圧洗浄
4)低圧洗浄
5)蒸気クリーニング
6)油処理剤
7)ブラシがけ、スクラブ、ふき取り
8)油吸着材
9)現場ピット洗浄
等、多くの浄化手法が適用された。
また、油汚染主要区域における流出油の移流・拡散並びに漂流油の面積の予測が油流出モデルOSIS(Oil Spill Information System)によって行われた。このモデルは、AEA Technology社とMaritime Technology社によって開発されたものであり(Leech and Walker,1992)、現在MPCUにより防除作業対応用のシミュレーションモデルとして使用されているものである。
事故の際にMPCUは、リモートセンシング用航空機に搭載した航空機搭載型側方監視レーダー(SLAR:Side Looking Air-borne Radar)により当該海域上空から油膜の経路を確認したが、0SISによる予測結果とSLARによる観測結果の整合は良好であった(Lunel,1997)。
(3)被害状況及び回復状況
当初、ミルフォード・ヘブン付近の海岸線が流出油で汚染された後、その大半が南と東に流れ、ベンブロークシャー海岸の広範囲が影響を受けた。油の一部は、Skomer島とSkokholm島に到達し、St.Brides湾にも流入した。影響地域には、特別科学的重要地区30ヶ所、国立自然保護区2ヶ所、海洋自然保護区1ヶ所が含まれていた。
商業魚介類については、魚類には汚染があまり見られないのに対し、二枚貝への汚染がひどい状況であった。また海面油により被害を受けた鳥類は6900羽に達し、ウェストアングル湾生息、の150個体の珍種ヒトデの生残個体数は20個体以下という状況であった。
しかしながら、この事故対応で分散処理剤を使用したが、分散された油の濃度が10ppmを超えたのは局所的かつ短時間であって、急激に1ppm以下に下がった。従って、初期の自然拡散と油処理剤により分散した油の濃度は、環境上軽微な影響しかもたらさなかったとされている。事故発生後約3.5ヶ月後の1996年6月までに、海水中の油の濃度は、流出汚染区域全域において従来のレベルに戻った。
また、この事故では、1996年3月29日現在における流出原油72,000tの物質収支が以下のように推定されており、流出油の蒸発量が非常に多いことと、分散処理剤の有効性が裏付けられた。