この方式の特徴は、ある航空機が送信した位置通報が、直ちに他の航空機で受信できることにあり、空地データリンク通信によるタイムラグはあるものの、空対空における位置通報Broadcastを模擬している。
なお、この方式では、1つのメッセージで1機分のトラフィック情報しか送信しないため通信の効率は悪く、全ての航空機に対してトラフィック情報を与えることにした場合、対象とする航空機の数が増えると送信するトラフィック情報は航空機の数の2乗に比例して増加してしまうという問題点がある。
しかしながら、トラフィック情報は航空機同士における衝突回避を支援するための情報であることから、遠方にいる航空機の情報はあまり意味を持たない。そこで、地上側では、受信した位置通報の緯度、経度情報から送信対象とする航空機の絞り込み処理を行う。これによってメッセージの増加を抑えることができる。
送信対象とする航空機の判定方法としては、トラフィック情報の提供時間間隔において航空機同士が最大速度で接近した場合に衝突する可能性のある範囲より十分広い範囲を提供する必要がある。例えばトラフィック情報の提供間隔を1分、最大速度を120ktとした場合、相対速度は240ktとなることから、1分間に4NM(約7km)接近することになる。この場合、例えば範囲に約2倍の余裕を見て10NM以内の航空機に対してトラフィック情報を提供するように定める。なお、トラフィック情報の送信間隔が長いような場合には、それに見合った範囲にトラフィック情報を提供する。
なお、位置通報は一定周期で通知されるため、ある航空機からの位置通報を受けた時点では、他の航空機の正確な現在位置はわからない状態にある。位置通報の周期が航空機の飛行速度に対して十分短いような場合には、以前の位置通報で得られる位置情報をそのまま利用しても、それほど問題がないが、今回利用するADSでは64秒以上の間隔があいてしまい、とても無視できるような時間ではない。そこで、地上側では想定される最も危険な位置をもとに送信対象の判定を行う。
(b)蓄積送信方式