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5.3.1 位置通報

 

「位置通報」は自機の位置・高度を機上評価装置が自動的に地上評価装置に向けて送信するものである。地上評価装置は受信した位置情報をマップディスプレイ上に表示することで航空機の位置を把握することができる。

 

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(1)ADSとの対応

ACARSを利用した位置通報アプリケーションとして既にADSがARINC622/745において規定されている。本研究における「位置通報」アプリケーションの送受信アルゴリズム、データ項目等の仕様はADSと同じとする。ただし評価試験の際のツールとして機上評価装置から位置通報の開始/終了を設定できる機能が必要と考えられるため、機上評価装置からの位置通報リクエストを追加する。また地上評価装置において他のアプリケーションを提供するために航空機の位置を把握する必要がある場合には、自動的に位置通報を開始できることとする。

 

(2)送信間隔

ACARSの通信容量を考慮すると位置通報の送信頻度には上限がある。特に評価試験においては極力実運用に影響を与えないようにする必要があり、位置通報の間隔を数秒程度に短くすることは不可能と考えられる。従って詳細設計時においては評価試験において許容される通信トラフィックの算出を行ったうえで、位置通報の最小間隔を決定する必要がある。ここでは現在ACARSにおけるADS機能を備えたボーイング社のFANS-1パッケージが最小64秒毎の位置通報であることから、これを基準として64秒を位置通報の最小間隔と定める。

 

(3)高度データ

通常航空機の気圧高度計は大気圧から高度を算出する際に地表での気圧に対応した補正を行っている。この補正値を気圧規正値といい、空港での気象観測によって得られた補正値をQNHという符号で呼んでいる。QNH2998とは、海抜0ftの高度の飛行機の高度計に29.98inHgの大気圧が加わるという意味であり、標準大気圧29.92inHgよりやや気圧が高い状態を意味する。

QNHの値はATISによる音声メッセージあるいは管制官からの音声による通報によってパイロットに伝達され、パイロットが気圧高度計の気圧規正ノブを回してQNHの値を設定する。但し14,000ft以上の高度および洋上空域についてはQNHは適用されず、すべての航空機が29.92inHgの標準大気圧を気圧規正値として用いている。

また地上の管制用レーダーでは、地上側の計算機によってQNH補正の処理を行いQNH補正後の高度を管制官のスコープに表示している。

以上を考慮して位置通報の中に含まれる気圧高度データは「QNH補正前の高度」と定める。ARINC745によるADSの規格ではQNH補正について特に明記されていないが、これは高々度および洋上での大型機による使用を意図したものでありQNH補正が不要なためと思われる。

 

 

 

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