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5.3 試作評価アプリケーションの検討

 

ここでは試作評価システムで実現するアプリケーションの検討を行う。最初に4章で述べたアプリケーションに対して第2章で述べた機上側、地上側からのニーズを述べる。次にACARSの通信能力、ハードウェア等の制限を考慮した評価試験における実現性を述べる。以上のニーズ、実現性を考慮して試作評価システムで実現を目指すうえで考慮すべき点を明確にする。

 

(1)機上側からのニーズ

VFRによる飛行は常にVMCを維持して飛行する必要があることから、飛行前の情報収集はもとより、飛行中においても常に刻々変化する気象などの情報を入手し把握しておく必要がある。気象情報の中でも降水強度を画像データで表すレーダーエコー強度やARNAV社GeoNetで提供しているような各飛行場のVMC/IMCのグラフィカル表示は視覚的にパイロットに情報を伝達できるため非常に有効であると思われる。

またSee and Avoidを基本とするVFRにおいても、トラフィック情報がマップディスプレイ上で視覚的に、あるいは音声警報で聴覚的に地上から提供されれば、パイロットは周囲のトラフィックを迅速に把握することが可能となる。

また報道取材や防災など1部の特殊用途に限定はされるが、地上から機上へ目的地の位置や飛行経路を正確かつ迅速に提供することへのニーズが存在する。

 

(2)地上側からのニーズ

地上において小型機運航を管理・監視する場合に最も重要なことは航空機が今、何処を飛行しているかを把握することである。位置通報により自動的にディスプレイ上に飛行経路が表示され、また必要なときには地上側から位置通報をリクエストしパイロットに負担をかけずに航空機の位置が確認できることは非常に有効であると思われる。

また現状のVHF音声通信では集まりにくいVFR機からのPIREPをデータリンクを用いて自動的に収集すれば、タイムリーな気象情報を飛行前のブリーフィングで利用可能となるだけでなく、運航中の機体への提供やVFR用の悪天予報も可能となる。

また、現状のVFRにおいてパイロットが行う必要のある到着報を自動化することはワークロードの軽減および確実なフライトプランのクローズに繋がる。

 

(3)評価試験における実現性

評価試験で使用する機体は一般的なヘリコプタを想定しているため、対気速度や外気温などのデジタルデータを機上で入手するのは難しい。従ってデータリンクで自動PIREPを実現することは困難である。

また試験において使用可能な機体数に制限があること、地上レーダーの情報を入手することが不可能であること、ACARSの通信容量から送信頻度が制限されることを考慮するとトラフィック情報提供の有効性を実運航の中で評価することは難しい。またACARSの通信容量より気象画像情報のフルグラフィック表示にも制限が加わる。

 

 

 

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