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4.2.2気象情報の通報(PIREP)

 

航空機の運航をとりまく環境のうち最も重要な要素の一つに気象現象があげられる。現在、気象衛星などを利用して各方面から気象情報を入手することが可能であるが、小型機が運航するような低高度や山間部では十分な気象情報が入手できない状況にある。

その場合、実際にその空域を飛行している航空機からのPIREP(機上気象通報)により提供されるリアルタイムな気象情報は非常に有益である。しかし現状のVFRではPIREPの行為自体がパイロットの負担となるため、十分な数のPIREPが集まらない状況にある。またPIREPはパイロットの目視観測なので経験によりデータに違いが生じる。

データリンク技術を利用すればPIREPの自動化、定量化が可能となり、パイロットに負荷をかけずに十分な精度を持った気象情報がリアルタイムで入手可能となる。大型機では現在ACARSを利用して自社のホストコンピュータに対して適当な間隔で位置通報を行っているが、その中に温度などの気象情報も含まれている。その情報を自社内でデータベース化し運航管理に利用している。米国では湿度の情報が有益ということでFAAが出資して貨物機などにセンサを取り付けて気象情報の通報を集めている。

PIREPを行っているシステムを表4-4に示す。

 

093-1.gif

 

(1)送信種別

PIREPは送信頻度がそれほど多くなく、また送信先も特定の地上局に限定されることもあり、アドレス指定型で実現可能である。しかしPIREPは将来的には適当な間隔で4.2.1項で示した位置通報の付加情報として送信されるものと思われ、その場合位置通報の送信種別に準ずると考えられる。

 

(2)送信項目

現在音声通信で行われているPIREPには明確なフォーマットが存在しないが、一般に通報される可能性のある項目を分類すると表4-5のようになる。

PIREPを自動化するためには上記項目を測定するための機上搭載センサが必要である。さらに各センサの出力がデジタル化され機体の中でデータバス化される必要がある。しかし現状では一部の機体を除き小型機(特にヘリコプタ)において各センサのデジタルデータを入手することは困難である。例えば風向/風速を求める場合、GPSより対地速度が得られるため対気速度が求められれば計算可能である。しかし、対気速度のデジタルデータを入手するには例えばADC(Air Data Computer)が必要となるが、一般にヘリコプタに搭載されている例は希である。

 

 

 

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