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2. アビオニクスの現状と問題点

 

2.2.1 航法装置

 

(1)現状と問題点

現在、航空機はVOR/DME、NDB、ILS等の航法援助システム、また大型機においては自立航法システムとしてINS等を利用して運航を行っている。これらの航法援助システムはVHFやUHF帯の電波を利用しており電波の到達距離の限界から、多くの地上設備が必要となる。また、INS等の自立航法システムでは経過時間とともに測位結果に累積誤差(1時間あたりlNM程度)を生じるという問題がある。

 

(2)衛星航法の導入

現在の航法システムにはこのような欠点や限界があり、今後ますます過密化する航空交通に対して航法精度の向上およびそれによる管制間隔の短縮等が求められている。

このため、1984年からICAOで将来航法システムの見直しがなされ、航法に人工衛星を利用した全地球的衛星航法システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を導入することが決定した。現在、ICAOのいうGNSSを構成する世界的衛星測位システムとしては、

・米国国防総省が管理運用しているNAVSTAR/GPS

・ロシア国防省が管理運用しているGLONASS

の2つがあるがGLONASSの方はGPSと比べて利用率が低く精度の検証も十分には行われていない状況にある。一方、GPSは国防総省(DOD)、運輸省(DOT)、内務省(DOI)、商務省(DOC)、農務省(DOA)および航空宇宙局(NASA)の6省庁からなる方針決定機関(IGEB:Interagency GPS Executive Board)を頂点に様々な組織が形成され国内外のGPSの民生利用が促進されている。

1991年9月の航空委員会で承認されたFANS構想ではGPSを積極的に利用することを検討しており、FANS委員会でもGPSを民間航空へ適用するために必要な国際基準策定を行うためのパネルが設立され、具体化されてきている。

また、U.S.FRP(米国連邦無線航法計画)では、従来の航法システムを図2-1のようなスケジュールでフェーズアウトする計画を発表している。この計画によれば、2005年〜2010年の間に、従来の航法システムはほとんど使用できなくなることになり、GPSに代表される衛星航法に完全に置き換わることになる。

GPSを既存の航法システムと置き換えるにはGPS自体のAccuracy(測位精度)、Integrity(完全性)、Continuity(連続性)、Availability(有効性)、を今まで以上に向上させる必要があり様々な基準が設定されている。GPSのレシーバに要求される基準は、RTCA/DO-208にMinimum Operational Performance Standards for Airborne Supplemental Navigation Equipment Using GPSが規定されており、具体的にはFAAの技術基準TSO-C129に要求事項が記載されている。使用目的に応じて、この基準を満足するGPS受信機を使用しなければならない。

 

 

 

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