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満席の乗客を乗せたS76は定刻通りに離陸し、有視界気象状態を維持しながら湾の入り口に向かって上昇した。

1000ftで雲に入り完全にIFRとなった。ルートチャートにしたがって飛行すると思われたが、左に旋回を行いながら上昇を続け、バンクーバーVOR(YVR)のラジアル330°にのりYVRに向かって飛行を続け4000ftで水平になった。効率的な運航ということで最短ルートをとっているようで、ACCもトラフィック状況をみて許可していると思われた。

この時の外気温度は2℃でアイシングを考えるとこれ以上の高度は無理と思われる。

水平飛行してしばらくすると、雲の切れ間があり地面が見え始め、そこにはバンクーバー国際空港があった。

YVR通過後はコースを173°にとり南下し、15NM南付近からコースを157°に変更してロランのルートでヴィクトリアの初期進入ポイントに向かった。この時、VOR/DMEはヴィクトリアVOR/DMEにセットされていた。途中、ヴィクトリア国際空港のR/W27ファイナルコースを横切ったあたりから高度を下げ初期進入ポイントまでには完全なVMCになった。初期進入ポイント付近でIFRをキャンセルしたのであろうか、機長はヘリポートに向かって外を見ながら進入を継続し、予定通りダウンタウン・ヴィクトリアに着陸した。

 

(a)通信

通信の状況については、実際はATCを聞くことができなかったためコックピット内のVHF周波数のセット状況から見てみることにした。

ヘリポートであるダウンタウン・バンクーバーを含む湾全体はバンクーバータワー(町の中にある30階建てのオフィスビルの屋上にある)がコントロールしており、ヘリが地上にある状況下でも通信設定が可能である。

当該飛行にかかる通信設定は次のとおり。

 

024-1.gif

 

(b)監視

全飛行区間がレーダー覆域下であり、且つ、社用無線が通じるようであるので監視体制に問題はないと思われる。

 

(4)まとめ

ヘリジェット社の社長が言うように、ヘリコプタ旅客輸送は都市型で路線も60〜80NMと短い区間でないと商業的には成功しないと思われ、今後その方向で発展するものと思われる。このような飛行環境下では、環境問題(騒音)やアイシングというヘリコプタにとって大きな問題を解決していかなければならないが、現状では飛行経路や高度を適切に設定することにより対応しなければならない。

したがって、航法では細かく経路を設定できるロランCやGPS等のRNAVの利用が欠かせないし、精度を考慮すると今後GPSの利用が必然と思われる。

通信については、今回のフライトでも分かるように、混雑した空域を飛行することになると通信設定が非常に忙しいものとなることから、通信量を減らす手段、例えば、1部の情報はデータリンクで行う、等を考慮する必要がある。

WXレーダーの使用については、低高度では電波の地表からの反射により本来の悪天候空域等の判断をすることが難しい状況にあることから、これに代わる悪天候空域を画像で見ることのできる機器が必要であると思われる。

 

 

 

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