IV.本報告書のサマリー
以下に本報告書に記述されている調査・研究結果のサマリーを示す。
(1)概況
本研究は、昨年度まで3ヶ年に亘り実施された「簡易運航管理のための小型機搭載用衛星通信・航法装置の開発調査研究」の成果を踏まえ、小型機運航の運航効率および安全性の向上のために、運航管理、運航監視ならびに運航支援を行う安価な空地データリンクシステムの構築に際して必要な機能要件の洗い出しを行い、試作評価を通してその有効性を検証することを目的とするものである。但し、小型機用の航空衛星通信のインフラ整備状況は世界的にもあまり進んでおらず、我が国ではインマルサットのAero-C、Aero-Iともにサービス提供時期およびその将来計画が明確になっていない。また運輸多目的衛星MTSATも現時点では打ち上げを待つ状態にある。従って本研究においては、まずはVHFデータリンクを用いて上記の検討を行い、実験に必要な環境が整い次第、衛星通信を利用することとする。
なお、本研究においては平成9年度から以下に示す活動を実施する予定である。
(a)平成9年度
空地データリンクによって取り扱うべき情報の洗い出しを行い、それらの情報を収集/加工/提供するために地上支援システムに必要となる機能の検討を行い、それを実現するための地上評価装置の基本設計、機上評価装置の改修の基本設計を行う。
(b)次年度以降
上記の基本設計に基づいた詳細設計を行った後、地上評価装置の開発および機上評価装置の改修を行う。その後、試作評価システムの動作確認を行う試験を実施するとともに、別途いくつかの運航形態を仮定した通信項目/補助機能等に関する評価試験も実施する。
次に試作評価システムを運航者に預託して運航評価試験を実施するとともに、衛星通信の利用環境が整っている場合には、衛星通信試験を実施し、衛星通信の特性が運航管理/運航監視/運航支援に与える影響についても評価を行う。
(2)小型機運航の現状分析
現在の小型機のVFR運航における問題点として、以下の3つが挙げられる。
・気象の影響を大きく受け、高運航率が望めない点
・See and Avoidのみに依存することによる安全性の問題
・山間部や低高度を飛行する場合における通信のブラインドエリアの問題
また、運航管理・運航監視の面では、航空機の位置を正確に把握することができないことから、効率的な支援情報の提供を行うことができないという問題もある。
ここではこれらの問題点に対して、アビオニクスの現状、地上支援システムの現状等の分析を行った上で、衛星航法・衛星通信等の人工衛星技術と、データリンクを利用した運航支援システムを構築することを提言するとともに、構築した運航支援システム上