日本財団 図書館


県代表の活動には以下の5項目の特徴がある。

?@ フランス共和国のメディアトュールと違い、地方代表は直接住民と接することができる。

?A 地理的な近接性によるアクセスの容易さは、どのような問題であれ住民が抱えている問題を解決するために地域代表に直接出向いていくことを促進している。

?B それゆえこの地域代表は、成文手続の範囲外やメディアトュールの権限で扱えない問題までもしばしば助言や情報提供を求められる。

?C 彼らの活動の役割の増大は、地方における高いレベルの統合や、彼らの情報提供や指示の補完的役割の効率性を示している。

?D 人々に接近し、行政サービスや地方公共団体に親しむということは、成文手続を必要としながら高度に複雑な問題を処理しなければならないことになる。

 

(2) メディアトュールの活動

 

ここでは、一番新しいメディアトュールの1996年の年次報告書から、メディアトュール活動の中で新たな課題となっているものを実際に取り上げ、活動の変化を検討してみよう。

現在のメディアトュールであるジャック・ペレティエは、1996年年次報告書において二つの必要性を強調した。それらは基本的な重要さであると思われるものであるが、その一つは公共サービスを簡素化し、人々に近いものとすることであり、二つには社会的弱者や権利を行使できない人々に心遣いが行き届くようなサービスや、支援的なサービスにすることであった。この年次報告書で選ばれて扱われている主題は、連帯(solidarity)と配慮(attentiveness)という目標を明らかするものである。ちなみに、年次報告書で取り扱っているテーマは、住宅問題、公務員の組織間異動、財政的調停、囚人の権利、社会的問題における裁判の遅延、旧植民地フランス人における年金問題、県代表の任務の発展、改革案の改善、国際オンブズマン会議である。

 

ア. 住宅問題とメディアトュール

まず、事例の一つとして、住宅問題を取り上げ、いかに住宅問題が苦情申立人と相手のお互いの調和をとり維持していくことが困難であり、また「社会的差別」の最初の兆候のひとつともなるものであるかを明らかにしたい。

フランスでは、困難な経済状況の中で、住宅問題は世帯数の増加により重要な問題となってきている。メディアトュールが住宅問題という領域に介入することは、住宅サービスを担っている公共組織を相手にすることであり、それは一般的に公共の住宅公団や民間の低所得者用の住宅機関が該当する。当然のことながら、メディアトュールは純粋な民間秩

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION